トヨタ社長が強調する「原点回帰」 激変期に打ち出す“トヨタらしさ”とは決算は過去最高更新(1/3 ページ)

» 2018年05月09日 20時25分 公開
[加納由希絵ITmedia]

 「トヨタらしさを取り戻す」。トヨタ自動車の豊田章男社長は5月9日の2018年3月期決算会見で、こう強調した。そのための鍵となるのが、トヨタの真骨頂といえる「トヨタ生産方式(TPS)」と「原価低減」だという。業界の大変革期を迎える今、トヨタの象徴として受け継がれてきた取り組みについて言及するのはなぜだろうか。

photo 決算会見で思いを述べたトヨタ自動車の豊田章男社長

増収増益で“連敗”回避

 18年3月期連結決算は、売上高が前期比6.5%増の29兆3795億円、純利益が36.2%増の2兆4939億円。為替が円安傾向だったことが寄与し、2期ぶりの増収増益だった。いずれも過去最高を更新した。

 豊田社長は今回の決算を「たゆまぬ改善という『トヨタらしさ』が表れ始めた決算」と総括。17年3月期が減収減益だったことから、「連敗だけは絶対にしないと決意し、徹底的に原価低減活動を積み重ねた結果」と語った。

 実際、新車販売台数が大きく伸びているわけではない。グループ総販売台数は1.9%増の1044万台。国内では主力の「プリウス」「シエンタ」が伸び悩み、販売台数が減少したが、モデル切り替え時の原価改善の効果で営業利益は増益だった。また、欧州やアジアでも、原価低減が寄与し、増益となった。

 一方、苦戦している北米では、「RAV4」などスポーツタイプ多目的車(SUV)は好調だが、「カローラ」など乗用車が減少。また、販売店に対するインセンティブ(販売報奨金)の増加傾向も続き、北米事業単体では営業減益だった。

 20.3%増と大きく伸びた連結営業利益の増益要因は、為替変動による影響が大きかった。北米のインセンティブ増加などが減益要因になったが、原価改善が1650億円の増益要因になった。

photo 北米ではSUVが好調。写真は新型「RAV4」

今期は円高で減収減益予想

 19年3月期の見通しは、売上高が前期比1.3%減の29兆円、純利益が15.0%減の2兆1200億円。グループ総販売台数は微増の1050万台の見通し。タイなどのアジアで台数増加を見込むが、新車効果が一巡した日本や中近東で減少を予想している。

 減収減益予想の大きな要因は、前期より為替を円高に見ていることだ。米ドルで1ドル=105円と、前期より6円円高の見通し。原価改善の効果も見込んでいるが、為替変動の影響による減益幅が上回ると見ている。

 小林耕士副社長は今期見通しについて、「保守的な数字ではあるが、あまりにも保守的に見て『達成しました』と言うのはよくない。今期予想はこれでも欲張った数字。原価低減の効果を多めに見積もっている」と説明した。

 今回の決算は、株式市場の取引時間中の午後1時25分に開示。株価は発表後に急上昇し、前日と比べて約4%高い7424円で取引を終えている。

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