トヨタ社長が強調する「原点回帰」 激変期に打ち出す“トヨタらしさ”とは決算は過去最高更新(3/3 ページ)

» 2018年05月09日 20時25分 公開
[加納由希絵ITmedia]
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仕事のやり方が変わってきた

 会見の主な一問一答は次の通り。

――18年3月期決算の評価は。

小林氏: 走り高跳びで例えると、バーを越えたがまだ揺れている状態。北米事業は課題も抱えている。表面上の数字は良くなったが、課題も浮き彫りになった。しっかりと戦略を立てていかなければならない。

豊田氏: (当初は減収減益予想だったが)四半期ごとのタイミングで正しい情報を伝えようとしていた結果、上方修正していくことになった。仕事のやり方が変わった結果と捉えている。

――今後の販売台数の成長について。

豊田氏: 過去の経験から、急激に台数が伸びても、その後の影響が大きい。持続的に、年輪のように積み重ねていくことにこだわってきた。一方で、中国をはじめ、市場全体が急激に伸びているところもある。年輪を重ねた期間で体力もついてきた。今後伸びる市場には、それなりのタイミングで経営資源を投入し、市場に遅れないようにしていきたい。

――原価低減とTPSのメッセージを強めている。

豊田氏: 「闘い」という言葉を使っているが、それはトヨタらしさを取り戻す闘い。原価低減、TPSは使い古された言葉ではあるが、トヨタらしさを取り戻すのに必要なエッセンスだ。

小林氏: トヨタの体質として、自分のことのように原価の意識を持って仕事をしてもらいたい。事務系の職場でも、会議の無駄、根回しの無駄、資料作りの無駄、調整の無駄がある。いつの間にか、読まない資料まで作るようになってしまった。話し合いながら、無駄なことはやめていきたい。本当の“仕事”をする時間を作っていく。

photo 決算会見で説明する小林耕士副社長(右)

――18年1月には、例年よりも前倒しで役員体制を変更した。

豊田氏: 従来は機能分業の組織で、副社長は機能トップ。全体を動かすのが社長だった。カンパニー制も取り入れたが、経営陣みんなで動かす体制ではなかった。1月からは社長と6人の副社長を中心とするマネジメントチームを編成し、「7人の侍」と呼んでいる。例えるなら、ドライバーが1人で運転するサーキットレースから、ドライバーと助手席のコドライバーが連携しながら競うラリーに走り方を変えるという発想。今後は7人がもっと現場に行き、方向やスピードを変えていきたい。大きなうねりに変えることを期待してもらいたい。

――トヨタらしさを追求したらイノベーションが生まれるのか。

豊田氏: トヨタの歴史を振り返ると、織機も自動車も、イミテーションを作ることから始めた。それが出発点で、その後、それをインプルーブメント(改善)に変え、結果としてイノベーションにつながってきた。最初は米国の自動車を参考にしていたが、インプルーブメントの段階でロングセラーの商品を出し、ハイブリッド車や燃料電池車というイノベーションにつながっている。原価低減とTPSを基本動作として、身に付けていくものだと考えている。

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