米Facebook日本法人の長谷川晋代表取締役は5月18日に開いた記者発表会で、SNS「Facebook」における個人情報不正利用問題について「さまざまな方にご迷惑、ご心配をかけたことをお詫びいたします」と謝罪し、対策を発表した。
Facebookの性格診断アプリの回答者やその友人たちの個人情報が不正に収拾され、2016年の米大統領選で利用されたという疑惑は、米Facebookを大きく揺るがした。被害に遭ったユーザーは主に米国人で、最大8700万人に上った可能性がある。18年3月に個人情報の不正利用が判明すると、株価は急落。4月には米議会で公聴会が行われ、マーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)が謝罪する事態となった。
なぜこのようなことが起こったのか。長谷川代表によると、13年に英国の研究者コーガン氏が性格診断アプリを開発。14年にFacebookはアプリに共有するデータを制限したが、コーガン氏の性格診断アプリにはその制限が反映されていなかった。15年にコーガン氏のアプリから得たデータが政治的キャンペーンに利用されていることが判明し、Facebookはアプリを削除。コーガン氏やデータ提供者にデータの消去を求め、「完全に削除した」という書類を受領した。しかし、実際はデータは説明通りに削除されていなかった可能性があるという。
問題となったアプリを利用した日本人は100人程度で、日本では米国ほどの影響はないが、長谷川代表は「1アプリの問題ではなく、Facebookというプラットフォームを安全安心に使っていただく上での大きな課題。トッププライオリティとして取り組んでいく」と話す。
同様のプラットフォーム不正利用を防ぐために、(1)利用実態の調査、(2)データ不正使用の影響を受けた利用者への通知、(3)未使用のアプリケーションのアクセスを無効にする、(4)Facebookログインデータの制限、(5)利用者がアプリにどのデータを提供しているかの設定を見やすくし、管理を推奨する、(6)脆弱性の発見・報告に報奨金制度の適用――を行う。
また、プライバシーセンターの新設、サービス規約におけるデータに関するポリシーの明確化、規約違反の報告を簡単にする機能なども実装した。5月には外部サイト履歴を削除する「履歴をクリア(Clear History)」機能を発表。提供開始は数カ月後になる見込みだが、ユーザーがFacebookに情報を共有しているWebサイトやアプリを確認し、情報の消去や今後アカウントと紐付けしないよう設定することができるようになる。
Facebookはこれまで、外部の企業からデータの提供を受け、Facebook外での行動(Webサイトでの商品購入や、オフラインでの行動)を含めてターゲティングできる広告商品を提供していた。不正使用対策を行うことで、こうした広告を展開することはできなくなる。
不正利用問題を巡っては、老舗文房具専門店「伊東屋」が「個人データの活用方法に賛同できない」とし、Facebook内に開設していた公式ページを閉鎖するなども起こっている。
長谷川代表は「個々の事象を全て把握できているわけではないが、少数の広告主から不正使用問題に関する相談を受けています」と認めた上で、「日本のユーザーや広告主に対しての影響はもう少し注視するべきだと思っています。まずはユーザーの安心安全対策を行い、Facebookを信頼する利用者が増えることで、長期的には企業や広告主に対して貢献できると考えています」と説明した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング