最近話題の「企業間レンタル移籍」という仕組みをご存じだろうか。「ローンディール」などとも呼ばれるが、大手企業に籍を置いたまま、出向という形で期間を定め、ベンチャー企業で働くというもの。サッカーが好きな人ならピンとくるかもしれない。
この仕組みを提供しているのは、ローンディールという東京の企業だ。代表取締役社長の原田未来氏は、ラクーン(現・東証一部上場)やカカクコムといった企業で働いた経験を持つ。新規事業開発などに携わった経験から、複数の業界、企業、職種を経験することの意義を実感し、この事業を構想して起業したという。
今、知名度に頼ることに危機感を抱いている大企業では、社内ベンチャーのプロジェクトを立ち上げるなど、新しい価値を芽吹かせるためのさまざまな取り組みが行われている。そこには、大企業という資金に恵まれた土壌に新しい種を植え、正しく育てれば、やがて大木へ育ち、実を結ぶはずだという期待がある。だが、それが成功することが少ないのは、大企業には優秀な人材が集まるものの、そこから実際にイノベーションを生み出せるような人材を育てることが難しいからだ。
特に大企業では今でも人材の流動性が低く、一度入社すると、定年退職まで違う世界を見ることなく、何の疑問も持たずに大企業のカラーに染まってしまうことが多い。入社時点では優秀な人材も、安定を求め変化を好まない環境に置かれることで、新しい価値を見出すのが次第に苦手になってしまうのかもしれない。
対して、元気が良いのはベンチャー企業。イノベーションを生み出せるような人材を育成するなら、むしろ大企業よりも、既存概念にとらわれずスピード感のあるベンチャーの土壌のほうが適していると言える。
では、大企業の人材をベンチャーで“修業”させればいいのではないか。人材を新規雇用する余裕がないベンチャー企業にとっては、移籍者から大手企業のノウハウを吸収することができ、大企業にとっては、ベンチャーの自由な気風の中で経験を積んだ実戦的な人材を即戦力にできる。
転職をせずにベンチャー修業ができる、そんなレンタル移籍というローンディールの仕組みに、今、大手や中堅の企業が注目し始めている。
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