新規参入組が増えれば、顧客獲得競争は当然、激しくなる。荒木さんは、高齢者施設や自治体などにチラシを置いたり営業に出向いたりして、顧客開拓に努めてきた。その効果がようやく出始めたのか、今春ごろから新規の予約やリピーターが増え始めた。現在は車両3台、運転手3人体制だが、車両を効率よく稼働させるため、新たにもう1人雇う計画だ。
それでも経営は決して楽ではない。営業用車両の保険代は、普通車両に比べて5倍高いという。車検も毎年義務付けられている。車庫代も3台分。23区内なら、1台で月数万円かかる。「とにかく車の維持費が大変」と荒木さんはため息をつく。
追い打ちをかけるのがガソリン高。認可制の介護タクシーの運賃は、ガソリンの値段が上がったからといって、勝手に値上げできない。薄利の問題を解決するには、数をこなすしかない。「会社時代は、土日はしっかり休んでいたが、今は週末もほとんどない。大変ですよ」と荒木さんは言う。
苦労はまだある。通院は午前中が多いため、予約は午前に集中する。だから、いつも配車にてんてこ舞い。予約のドタキャンも珍しくない。当日朝、予約客から「今日は体調が悪いから、病院休みます」と電話がかかってくることもよくある。「えっ、体調が悪いから病院に行くんじゃないの?」と心の中でツッコミを入れつつ、泣く泣く応じる。「天気が悪いのでキャンセルします」と言われたこともある。そういう世界なのだ。
ちなみに介護タクシーは、法律上、ふつうのタクシーのように流しはできない。病院の玄関前での客待ちも禁じられている。既存のタクシー業界とのすみ分けのためだ。病院でトイレを借りるため、数分間、駐車するだけでも、タクシーの運転手から文句を言われることもあるという。
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