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空いたオフィスビルを「倉庫」に 近くの顧客に台車で配達 アスクルが実験「グレーゾーン解消制度」活用

» 2018年07月03日 12時50分 公開
[ITmedia]

 アスクルは7月12日から、オフィスビルの空きスペースを倉庫として借り受け、物流拠点として生かす実証実験を東京ミッドタウン(港区)で始める。コピー用紙などの商品を顧客企業付近のビルにあらかじめ保管し、注文に応じて台車で納入する流れ。労働環境の改善、コスト削減、二酸化炭素排出量の削減などが狙い。

photo アスクルの公式Webサイト

 従来は顧客から注文があるたびに商品を梱包し、全国9カ所の物流センターから車両で出荷していた。だが、注文が少ない場合は車両の積載量に余裕がある状態で配送しており、効率の低下やコストの増加、配送業者の負担増などにつながっていた。

 これらを解消するため、実験では受注データを解析して需要予測を立て、注文を受ける前にあらかじめ近隣のビルに一定数の商品を輸送し、保管しておく。注文があるとすぐに対応できるため、納入までのスピードも短縮できるとしている。

photo 実証実験の仕組み

 アスクルは「従来の当日配送では、午前11時までに注文を受けると夕方に配達するサイクルだったが、今回の実験では数時間以内に届けられるだろう」(広報担当者)と展望を話す。

 配送は佐川急便が担当する。実施エリアと対象商品は今後拡大する予定。

「グレーゾーン解消制度」活用

 実験を始めるに当たり、経済産業省が2014年に設けた「グレーゾーン解消制度」を活用した。法律上の規制が不明確な分野で事業を行いたい企業は、事業内容が規制の対象となるか否かを事前に確認できる制度。今回は実験に協力するビルのオーナーが、空きスペースを貸し出す行為が「倉庫業」に該当するかどうかが論点となった。

 アスクルの申請を受けて関係省庁が検討した結果、ビルのオーナーは自身の物品をスペース内で保管しないことなどから「倉庫業に該当しない」と判断。実験を始めることが認められた。

photo 「グレーゾーン解消制度」の詳細

 アスクルは「EC(インターネット通販)の継続的発展のためには、ECに最適化された新たな物流の仕組みが必要と考えて新たなモデルの構築に着手し、グレーゾーン解消制度を活用した」としている。

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