NASAと協業するベンチャーも オーストラリアの宇宙産業の現在地宇宙ビジネスの新潮流(1/2 ページ)

» 2018年07月07日 08時45分 公開

オーストラリア初の宇宙機関創設

 7月1日、南半球のオーストラリアで初めて宇宙機関が発足した。同機関の活動や国際協力のために今後4年間で約4100万オーストラリアドル(約45億4000万円)の予算が計上された。併せて、宇宙利用の予算として、同国の地球科学局に4年間で約2億6000万オーストラリアドル(約287億9600万円)が割り当てられた。

 世界の宇宙産業の急速的な成長を背景として、2017年7月に同国の宇宙産業能力を再検討するための専門家グループが立ち上がり、同年9月にはオーストラリアの宇宙産業の成長を目的とした長期計画の策定のために、宇宙機関を創設することが発表されていた。それが実行された形だ。

初めて宇宙機関が発足したオーストラリア 初めて宇宙機関が発足したオーストラリア

 オーストラリアの宇宙産業の歴史は古く、1967年に南オーストラリアに位置する世界最大の陸上射撃場「ウーメラ試験場」から同国初の人工衛星が打ち上げられた。同施設は2010年にJAXA(宇宙航空研究開発機構)の小惑星探査機「はやぶさ」のカプセル着陸地点としても使われたことで知られる。

 近年では、13年に「Australia’s Satellite Utilization Policy」が発表されるなど、衛星および宇宙関連技術の利活用を推進してきたが、今回の宇宙機関創設も含めてより広範囲な宇宙産業を目指していくと思われる。

NASAと契約するロケットベンチャーも存在

 同国の宇宙産業では衛星通信事業者のOptus、国営通信企業のnbnなどが有名だが、他の先進国同様に近年はベンチャー企業も増えつつある。例えば、Gilmour Space Technologiesは13年に創業した、オーストラリアとシンガポールに拠点を構える小型ロケット開発ベンチャーだ。

小型ロケット開発ベンチャーのGilmour Space Technologies(出典:同社サイト) 小型ロケット開発ベンチャーのGilmour Space Technologies(出典:同社サイト)

 20年までに最大380kgの小型衛星を地球低軌道に打ち上げることを目標にしており、複数の異なる燃料を活用する小型のハイブリッドエンジンを開発中だ。16年6月には同国初の民間開発によるハイブリッドロケットの打ち上げに成功(到達高度5キロメートル)し、今年1月には軌道打ち上げ用エンジンの燃焼試験も実施している。

 さらに同社ではロケット開発以外に、中長期的に人類が月や火星に恒久的拠点を構える未来も見据える。そのために今年2月にはNASA(米航空宇宙局)とSpace Act Agreementsを締結。これは同国の新興企業として初の快挙だ。今後共同で探査ローバー、推進系、宇宙資源利活用など多種多様な検討していくという。

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