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“世渡り力”だけでは生き残れない ダメ人間のための「フリーランス入門」 あの宮崎駿も最初はうまくいかなかった(2/4 ページ)

» 2018年07月23日 08時30分 公開
[小林拓矢ITmedia]

「かわいがられる力」「世渡り力」で生き残れるか

 しかし、私の周りでフリーランスとして働いている人を見ていると、いわゆる「世渡り上手」であることを理由に、仕事を取っている人も多い。実は私もそうしようと努力しているのだが、いつもうまくいかないでいる。そんな疑問を竹熊さんにぶつけたら、こんなことを言われた。

 「フリーランスで20年30年やろうと思ったら、性格がいいだけではダメ」。そう語る竹熊さんは著書『フリーランス、40歳の壁』にも出てきた、ある50代のカメラマンの話を切り出した。そのカメラマンは人柄がよく、写真も上手だったが、カメラマンとしては有名な人ではなかったのだという。なぜその人が仕事を取れていたか。「編集局長などの上層部と友達だったから。それで仕事がきていた」ということだ。

 竹熊さんによれば、「性格のいい人は出世しそうな社員にあらかじめコネを作っておき、仕事をもらう。でもその社員が定年になったら終わり」なのだという。世渡り上手と聞くと一見良く聞こえるものの、実はそんなマイナス面もあるのだと私は痛感した。

 私は「ああ、自分は世渡り上手にはなれないなあ」と改めて考えてしまったが、私としては「世渡り力」以外に、生き残るための方法がないのかが気になるところだ。そんな私に竹熊さんは、「余人をもって代えがたい人、または売れる人」になるべきだとアドバイスをくれた。なるほど、人間関係を構築するのが苦手な私のような人間は、「余人をもって代えがたい人」を目指すしか、フリーランスとして生き残っていく術はないのだ。

phot 「世渡り上手」であるだけではダメだと語る竹熊さん(左手前が筆者)

 「40歳の壁」を竹熊さんが掲げた理由として、これくらいの歳になると、編集者が年下になり、年上の人を使いにくくなっていくという構造があるからだという。

 私の場合、まだ現時点では年上の編集者のほうが多い。だが、時々やたらと若い編集者と仕事をすることもある。その場合は、何物にも代えがたい「個人の能力」で勝負するしかないのだろう。

 しかも私の場合、年上の編集者とも「お友達感覚」で仕事をすることはなく、編集者と飲みにも行かない。私としては「世渡り上手」路線でやっていくのは困難だという結論に達した。だから、ライターとしての専門性を磨いていくしか道はない。

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