サッポロ第三のビール「LEVEL9」、謎のレベル設定で売れた深い訳 名は体を表す(1/2 ページ)

» 2018年07月30日 07時00分 公開
[服部良祐ITmedia]

 サッポロビールが6月に発売した「第三のビール」(いわゆる「新ジャンル」)、「サッポロ LEVEL9贅沢ストロング」が好調だ。同社によると、年間販売計画である1600万本(633ミリリットル入り大瓶に換算)のうち、30%を発売後4日間で売り上げた。第三のビールの中でもアルコール度数を最も高い9%まで高め、強めの飲みごたえが消費者に受けたとみられる。

 コストパフォーマンスの良さから人気となっている、高アルコールの第三のビール市場。度数が8%のサントリービールの「頂(いただき)」、7%のキリンビール「のどごしSTRONG」などビール各社が2017年からしのぎを削っている。7月にはアサヒビールも度数7%の「クリアセブン」を発売した。

 このジャンルでは最高のアルコール度数が売りのLEVEL9。しかし他社も味わいや販促に工夫を凝らす中、単純な品質だけでは訴求しきれない。それでもサッポロビールがこの商品をうまく消費者に売り込んでいる背景には、どうやらこの「LEVEL9」というネーミングの妙があるようだ。そもそも9は分かるが、なぜ「レベル」なのか。

photo 外国人が「ナーイン!」と叫ぶLEVEL9のWeb動画広告

 同社でこの商品のマーケティングを担当するブランド戦略部、齋藤愛子さんは「LEVEL9という商品名にはコンセプトのすべてを詰め込んだ」と言い切る。ネーミングの真意を聞いた。

とにかく「9」推しでプロモーション

 第三のビールで最高のアルコール度数を目標に開発されたLEVEL9。齋藤さんによると9%という設定にした理由は意外と単純。10%を超えると酒税法上で別ジャンルのお酒と見なされ、税率が大幅に上がるからだ。そこで「第三のビールの限界の度数」として9%にすることが決まった。

 齋藤さんによると第三のビールは製造する際、度数を上げるとどうしても甘くて重い味になる傾向がある。そこで甘みの発生源とされる麦芽の味わいを抑えめにするため大麦の比率を高め、ホップを添加するタイミングも2回に分けるなど工夫。高いアルコール度数と“ビールっぽいキレ”を両立させたという。

 こうして開発に成功し、商品名にも一番の売りである「9」を戴いたLEVEL9。「プロモーションでも『9』をキーワードに仕掛け続けた」(齋藤さん)。

 例えばWebで展開する動画広告。「ナーイン!」「シージョウハツ、キューパーセントノシンジャンル」。たった6秒、奇抜な格好の外国人タレントがカタコトで商品を持ちながらこのせりふを言うだけ。齋藤さんは「(外国人タレントに)とにかく『9』を叫んでもらうことで、思わず見てしまってクスッと笑えるようにした」と説明する。

photo 売り上げ999万本を突破したときのLEVEL9のPOP。9まみれだ

 店頭のPOP(店頭販促物)でも9押しを貫く。切りのいい「売り上げ1000万本突破」といったよくあるタイミングでなく、6月末には「おかげさまで999万本突破」と題したPOPを販売店に配った。商品の画像と相まって「9」まみれ。今やプロモーションを担当する取引先からも9にまつわる提案が殺到するようになった。

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