現在、国内ではトヨタ自動車を中心に、自動車メーカー5社のアライアンスが進みつつある。トヨタの豊田章男社長はこのアライアンスの説明に際し、たびたび「オールジャパン」を口にする。
中核にトヨタがあるのは規模から見て当然として、それぞれ立ち位置や任務が異なる。トヨタと株式を相互に持ち合いつつ技術を提供し合う独自な提携関係に立つのがマツダ。与えられた任務は開発生産の能力向上だ。
インドを主戦場に、次々世代マーケットと目されるアフリカを視野に収めるのがスズキ。これは言うまでもなくグローバルシェアの拡大の尖兵と位置付けられる。
秘密主義が災いしてこのアライアンスの中で何を成し遂げていくのかを一向に明確にしないスバル。新たに発表された中期経営計画でも未来の像が示せていない。何もアナウンスしないと何も考えていないと思われてしまう。不正問題で何よりも信頼回復が急がれる中、前向きなビジョンが示しにくいこともあって、遅れがさらに広がりつつある。
そしてグローバルにはASEAN攻略を中心に置きつつ、国内ではトヨタでOEM販売する軽自動車と小型車の開発生産を請け負う位置にダイハツがいる。
ダイハツは2016年8月にトヨタの完全子会社になった。トヨタの小型車を一手に引き受けるのかとウワサされたが、一方トヨタにも小型車部門がある。トヨタが狙うのは先進国マーケットであり、欧州を中心としたマーケットで宿敵、フォルクスワーゲンと戦うプレミアムコンパクトを造っていく。サイズだけ見ればどちらも小型車だが、トヨタはプレミアムコンパクトを、ダイハツは軽自動車の技術を生かした廉価で地に足がついたクルマを担当するという住み分けになる。
こうした背景の下、2017年3月、ダイハツはリブランディングを敢行した。そのキャッチコピーとなるのが「Light you up」であり、当時会見に臨んだ三井正則社長は「お客さまに寄り添う、つまりユーザーオリエンテッドな姿勢は、1957年のミゼットから続くダイハツならではの原点であります。この原点を忘れることなく、1ミリ、1グラム、1円にこだわり抜き、今後も軽および軽直上のコンパクトカーを含めたスモールカー市場にダイハツらしい商品を供給し続けてまいります」と述べた。
ミゼットは日本のモータリゼーション黎明期に、それまで経済的理由でクルマを導入できなかった個人商店に向けた、自転車や二輪車に代わる配達・配送手段として開発された。元をたどればダイハツは日本最古の自動車メーカーであり、エンジンの国産化に挑んだ学者たちが作った会社だ。科学技術の力で国民の暮らしを豊かにしようという明確な意図を持って作られ、その遺伝子がミゼットへとつながっている。
ダイハツはリブランディングに際して、この「人々の生活を照らす」という部分に注目した。それが「Light you up」の精神である。筆者の言葉で言えば、それは反プレミアムであり、浮ついた付加価値としてのクルマではない庶民の生活を豊かにする道具である。
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