チョコミントの「ミント」はなぜあの色? ブームの真相に迫る一見まずそうな「青緑」で売れた訳(2/3 ページ)

» 2018年08月07日 07時00分 公開
[服部良祐ITmedia]

「この色でなければチョコミントじゃない」

 こうして日本に上陸したチョコミント。同社の担当者によると当時の日本ではアイスと言えばバニラ、チョコ、イチゴの3つが一般的で、チョコミントは「もともと存在しない味」(担当者)。菓子の歴史を紹介する95年出版の『おやつストーリー』(オカシ屋ケン太こと泉麻人著、講談社)によると「当時は毒々しく見えたのか、売れ行きは芳しくなかったという」という。

photo 開店して間もない目黒1号店に貼ってあったチョコミントのポスター

 ただ、サーティワン独特の店頭試食サービス「テイストスプーン」で認知度アップを図ったこともあり、発売2年後の1976年にはブランド内で人気1位のフレーバーとなった。その後は定番品に落ち着き、2017年ごろからまたブームが再燃。18年も6月末までの出荷量は前年比3割増しで推移しているという。担当者は最近の猛暑から爽快感のある味、色を消費者が求めているとみる。

 「この色のアイスでなければミントではない、と世間では思われている」(担当者)。他店ではあえて「ミント色」にしない白いチョコミントのアイスも登場している。ただ、食べたユーザーから「ミント色のチョコミントアイスでなくては食べた気がしない」という声が同社に寄せられるという。「目で見える爽やかさがないと食べた気がしないのかもしれない」(担当者)

 米国でアイスの開発者によって意図的に作られ、その後日本でも定着したチョコミントの味と色の組み合わせ。ただ日本ではよく「青は食欲を減退させる色」と言われ、青色の眼鏡を付けたりして料理を青色に見せる「青色ダイエット」まであるくらいだ。

 実際、日本で青色の有名な食べ物というとアイスを除けばかき氷のブルーハワイ味くらい。そんな青に非常に近い「ミント色」がアイスにとどまらず最近、スイーツ全般に進出しているのはなぜか。

欧米人は青色OK、黒は逆に食欲減退

 東北大で食に関する人間の行動心理を研究する坂井信之教授は、青色に人間の食欲を減退させる効果が元から備わっているわけではないと指摘する。「黄色や赤色は食べ物が熟した際の信号になっているが、それ以外の(味と色の)決まりはない」。むしろ本能的に人間は食べなれているものを好み、慣れていないものは嫌うという。

 例えば欧米人は子供のころから青色の菓子を食べ慣れている。一方で海苔のような黒い食べ物は少なく、黒色では食欲がわかないので米国ではカルフォルニアロールも海苔を中に入れるほど。日本人とは逆だ。

 坂井教授によると、実際にわざと青色にしたイクラの写真を日本人に見せると気持ち悪いという反応が返ってくるが、欧米人は「グミかな」と思うくらいで不快に感じないという。「青い食品へのこの反応の違いは文化差によるもの。食の経験があくまで大事。食べたことないものは(人種・国籍を問わず)苦手に思う」

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