竹島水族館の仕事ならば何でもやりたいと公言する竹山さん。全てに前のめりで取り組む中で意外な才能を開花させたのがPOP作りだ。現在の竹島水族館はコストのかかる業者発注の解説板をほぼ一掃し、自分たちが知恵を絞って画用紙に手書きしたPOPをところ狭しと貼り出している。竹山さんは実習生時代からPOPを書かせてもらい、しつけの厳しい「お母さん」役である副館長の戸舘真人さん(38歳)から「絵は下手すぎるけれど内容が面白い」との評価を得た。
「最初は(館長の)小林さんに書き方を教えてもらいました。文字が多すぎると読む気がなくなるので、タイトルと絵を大きくすること。若い人でもお年寄りでも親しみやすく面白いと思える内容にすること、などがポイントです」
竹島水族館のPOPには魚類図鑑に書かれてあるような知識はほとんど記載されていない。飼育する中で苦労していることや、水槽の中で暮らす魚への愛のあるツッコミなどが、ユニークな絵と一緒に書かれている。
「時間が空いているときは館内に出て、お客さんが水槽の前で何を言っているのかを聞き取ります。例えば、『この魚は笑い芸人の●●に似ているね!』という声を聞いて、自分もそう思ったら、それをネタにしてPOPを書けるかもしれません。共感が大事なんです。『飼育員もそう思っているんだ』と共感したら興味につながり、うまくすれば魚の名前まで覚えてもらえます」
竹山さんによれば、「お客さんの声をとにかく聞く」ことは小林さんの教えである。立派な水槽や面白いPOPを作ったと自分では思っても、客が見て楽しんでくれないと意味がないのだ。
「何かを作ったらちゃんと結果が出ているのかを見ろ、といわれています。素通りされてしまったら何がいけなかったのかを考えて、新しいPOPを作ればいいんです」
いわゆるPDCAサイクルである。竹島水族館では23歳の飼育員も当たり前のように実践しているのだ。
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