仮想通貨、パブリックブロックチェーンの本質は「人間の関与を抜きに、ソフトウェアとP2Pネットワークにより信用を構築する」点にある。技術の力で信用を構築することにより、人間の組織を軽量化する(あるいは不要にする)ことが、仮想通貨の本来のパワーだ。
過去のインターネット企業の成功パターンを思い出してみよう。技術の力で組織を軽量化し、拡大可能にする(スケーラブルにする)ことが、急成長した組織に共通する特徴だった。例えばAmazonは店舗網を持たないECサイトとしてビジネスを効率化し、成長した。仮想通貨にも同様の潜在的な力がある。決済やその他の分野をより高効率に、よりスケーラブルにするように、仮想通貨は進化している最中なのである。
この点で、仮想通貨、パブリックブロックチェーンは既存の概念や産業構造を変えてしまうゲームチェンジャー、あるいは従来型ビジネスを駆逐してしまう破壊的イノベーションに相当する可能性があると筆者は考えている。
パブリックブロックチェーン | コンソーシアム型ブロックチェーン | プライベート型ブロックチェーン | |
---|---|---|---|
管理者の有無 | なし | あり | あり |
参加者 | 不特定多数 | 特定複数 | 組織内 |
利用例 | bitcoin | 金融機関などによる利用 | 金融機関などによる利用 |
IT分野の過去のゲームチェンジャーとなった破壊的イノベーションとして、パーソナルコンピュータ(PC)、インターネット、オープンソースの例がある。1970年代にパーソナルコンピュータが登場した時点では、コンピュータの専門家は「マニアのおもちゃ」としか見なかった。1980年代末、インターネット技術が商用化されて世界に解き放たれようとするとき、当時の情報通信の専門家がデジタル通信網の本流と考えていたのはTCP/IPではなく、国際標準の通信規格OSIや次世代伝送網ATMだった。オープンソースの概念も、その初期段階のフリーソフトウェア運動の段階では「うさんくさい」「ビジネスとは関係がない」と思われていた。オープンソースの概念がソフトウェア産業で定着し普及するまでには、数々の議論、摩擦があり、時間もかかったのだ。
こうしたゲームチェンジャーは「ネットワーク効果」により力を増していく。利用者、参加者が増えて技術開発の蓄積が進むにつれて、強力なイノベーションのハブとなる。登場後すぐには理解されなくても、やがてその後の社会を変える原動力となっていく。
しかし、仮想通貨は本格的なイノベーションを巻き起こす前に、少なくとも日本では強力な規制によって縛られようとしているように見える。どこに行き違いがあったのだろうか?
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