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» 2018年09月07日 06時30分 公開

三重・尾鷲で定置網漁:ITエンジニアからの転身 小さな漁港に大きな変化を生んだ「漁業女子」 (4/5)

[コヤマタカヒロ,ITmedia]

ITを駆使して漁業を“見える化”

 漁業をスタートしてから半年が経過した。事業は順調なのだろうか。

 「ゲイトにはもともと居酒屋という出口があって、仕入れをなくしてそのお金を一次産業の現場に還元していこうというのが目標だったので、戦略としてはうまくいっていると思います。獲れた魚をうまく10店舗へ運んでおいしい状態でお客さまへ届けるというデザインはまだまだ改良が必要ですが、日本には美しい四季があり、季節ごとに獲れる魚種も違います。1年間を通して操業することでこれからメニューも変わっていくでしょう。ただ、まだ10店舗全てを満たすほどの量の魚が獲れていないので事業としてはこれからです」

地元のお母さんたちと魚の加工作業を行う 地元のお母さんたちと魚の加工作業を行う

 収穫した魚は、港に揚げた後すぐに加工が始まる。地元で長年にわたり漁に携わってきたお母さんたちに手伝ってもらい、下処理をして冷凍。それを自社の定期便で東京まで運んでいる。現段階では衛生面なども考え、生食用の提供は行っていないそう。

 さらに、現在熊野にある干物などを作る加工場を須賀利にも新設する計画がある。船が出港するまでのガントチャートは終わったが、ゲイトが目指す漁業の未来に向かうガントチャートには新たに多くの工程が追加されている。

 「消費者ニーズの思考から離れて、漁業そのもので稼げるようになること、付加価値をつけることが今後の課題です。地域の文化や伝統のプロダクトから一次産業が生み出される地域、自然のいわば0次から考えることなくしては持続可能なデザインは完成しません。そういう意味だと、正直漁業は簡単ではありません。それも改良していく予定。さらに女性でも網揚げができるよう省力化できたら、より少ない人数で効率的に漁を終えられるようになるかもしれません。そこで浮いた時間や労力で釣り船を営業したり、他の漁法を模索したり、多面的な活動ができるようになります」

 最も大きな目標は漁師を増やしていくこと、そして、須賀利の海と資源を守ることだ。しかし、それはゲイトだけではできない。だから田中さんはさまざまなデータを、ITを駆使して“見える化”していくことを考えているという。

 「漁業って関わる要素が多いですし、いろんなデータが漠然としているんです。例えば、漁業は漁獲高のデータはありますが、天候や水温などのデータとは関連付けされていないとかですね。だから企業や行政など多くの人たちを呼んでオープンに実験していけたらと思っています。私たちが大変だったこと、失敗してきたことは全部情報公開しますし、センシングやIoT技術を利用すれば漁獲高などの予想がもっと正確に立てられるようになったりすれば、他の企業も参入しやすくなります。そうなれば漁業人口も増えるはずです。そうなれば資源管理をしながら豊かな海を守っていけます」

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