「運休」「復旧」の判断とは? 災害と鉄道、そのとき現場は……杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)

» 2018年09月07日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

復旧の優先順位は筆記試験と同じ「できるところから」

 えちぜん鉄道は福井駅を起点とし、海へ向かう三国芦原線と、山間部へ向かう勝山永平寺線がある。例年は山間部の勝山永平寺線の積雪が多く、三国芦原線の積雪は少ない。しかし、2月の豪雪では福井市内も約150センチ、沿岸部の三国地域も70センチの積雪となった。除雪に必要な機械や人出は限られている。どちらの復旧を優先させたか。

photo えちぜん鉄道線路略図(国土地理院地図を加工)

 「復旧させるにあたって、このときは三国芦原線から着手しました。理由は単純で、復旧させやすかったからです。福井市内も大雪。しかし、三国方面は先へ行くほど雪が少ないため復旧しやすい。天候も海側の三国方面の方が先に雪が止みます。勝山方面は終点に行くほど雪が多くなり、視界がなく、道路や山中の情報もない中では、除雪車さえも立ち往生、脱線などの危険が非常に高かった。作業を三国方面に向けて行いながら、勝山方面の情報を集め、自治体と連絡を取り、作業の準備を行いました」

 どちらの沿線も鉄道を必要とする人はいる。少しでも早く、少しでも長距離を復旧させたい。ならば、できる方からやるという。試験の問題と一緒だ。先に解ける問題から解いていく。優先順位は雪の量と作業の難易度で決まる。

 「難易度の高い作業を無理やり着手したらどうなりますか。除雪車が脱線したら、作業員がけがをしたら、その時点でどちらの路線も復旧できなくなります。安全を第一、最大、唯一の基本です」

photo えちぜん鉄道は福井鉄道と相互直通運転を実施している。黄色い車両は路面電車の福井鉄道へ直通する電車。6月21日に両社は「災害時相互協力協定」を締結した

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