言うまでもなく大坂を応援するか否かは個人の自由だ。しかしながら、その彼女を巡って今も沸き起こっているようなデリカシーに欠ける議論は一刻も早く封印するべきであると考える。百歩譲ってそうした主張や指摘を曲げられないにせよ、衆人環視のもとにさらされるような状況下でワーワーと拳を振り上げることだけはこれまでテニス取材を重ねてきた自分の立場としても、どうかやめてほしい。
大坂と親交の深いJTA(日本テニス協会)に属する幹部は、帰国中の彼女の本音について次のように代弁している。
「彼女は日本に帰国して想像以上の祝福を受け、とても喜んでいる。だが、その半面で裏側では戸惑いも生じているのは事実。帰国直後にメディアから『アイデンティティー』に関する質問を受けた瞬間、顔をしかめたことからも分かるように自分の出自関連の話題もクローズアップされている点には不快感をあらわにしている。
せっかくテニス選手として日本国籍を選んでくれ、東京五輪も代表選手として目指す方向性を定めてくれたのに、こういう動きが出てくると彼女は何か裏切られるような気持ちになってしまうでしょう。“私はもしかしたら歓迎されていないのではないか”“ハーフだったらいけないのか”などと自問自答を繰り返すようになってしまっても不思議はない。
いくらメンタルが強いとは言っても、彼女はまだ20歳。こうやって今まで以上にスポットライトを浴びたことで、それまでは掘り起こされにくかった出自までもが自分の及ばないところで面白おかしく取り上げられている。年齢的にもまだ若い彼女のショック度は決して小さいものではない」
「私は私」にならって言えば大坂なおみは、大坂なおみ。彼女が選択し、世界トップへとまい進するプロテニスプレーヤーの道中にコート外から余計な動揺を芽生えさせ、横やりを入れてはいけない。
国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。
野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2017年第4回まで全大会)やサッカーW杯(1998年フランス、2002年日韓共催、2006年ドイツ、2010年南アフリカ、2014年ブラジル、2018年ロシア)、五輪(2004年アテネ、2008年北京、2017年リオ、2018年平昌)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。
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