フェイクニュース対策は「言論統制」に利用されてしまうのか世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)

» 2018年10月11日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

シンガポールで高まる法規制の機運

 まずはシンガポールだ。シンガポール議会は9月19日、オンライン上のフェイク情報について調査した317ページもの報告書を公表した。この報告書は1月に議会で指名された委員らが取り組んだ調査で、フェイク情報がどれほどシンガポールにインパクトを与えるのかをまとめたものである。

 この報告書では、フェイクニュースがシンガポールにもたらしかねない影響をこう記している。「専門家らが強調するところによれば、オンラインのうそは、短期的にも、長期的にも影響を与える。一例を挙げると、13年に拡散された米ホワイトハウスに爆弾攻撃するというフェイクのツイートは、株式市場を暴落させ、スタンダード&プアーズ500種株価指数で一時、1365億米ドルほどが失われた」

 また、14年にミャンマーで仏教徒の女性が複数のイスラム教徒にレイプされたというネット上のうそ情報が仏教徒とイスラム教徒の衝突につながったとされるケースを取り上げ、こうした情報が「さまざまな害を与える」と指摘する。17年6月に英ロンドンで白人男性がイスラム教徒を狙って自動車で突っ込んだ事件にも言及している。

 さらには、フェイクニュースや偽情報が社会秩序を乱すとも主張している。その例として、日本で11年3月に起きた福島第一原子力発電所事故について、当時中国で日本からの放射性物質を避けるのに塩が有効だとの偽情報が流れ、大衆が塩を求めたことでパニックが発生し、塩の価格が10倍にも跳ね上がった話を紹介。フェイクニュースが「大衆を不安に陥れた」例として取り上げている。

 こうした事例から、報告書は意図的にフェイクニュースなどを流した人や企業には「厳しい罰金」を課したり、「フェイク情報を報じたメディアの広告を阻止」すべきだとし、「効果的にオンラインのフェイク情報の拡散と影響を阻止するために法規制が必要である」と主張している。19年には法制化されるとの話もある。

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