もちろん、この村田のスタイルが悪いと言っているわけではない。この戦い方で彼は五輪の金メダリストに輝き、プロでも群雄割拠のミドル級で世界王者にまで輝いたのだ。
ただ、村田はプロデビューから大手広告代理店やフジテレビの後ろ盾によってあまりにも大事にされ過ぎた気がしてならない。ネット上では無論、一部のボクシング関係者までも「ほとんど勝てる相手ばかり選んで対戦してきている」と揶揄(やゆ)しているのは、これらバックアップする側が村田をとにかくスターにしたいがために「アンダードッグ」とのマッチメークを推奨していたと思われるフシが見え隠れしているからであろう。
確かに村田が昨年10月にリマッチの末、WBA世界ミドル級王座を奪った相手としてアッサン・エンダム(フランス)がいる。ただし、エンダムはそれまで「PFP(パウンドフォーパウンド)ランク」(全17階級のボクサーの実力を格付けする指標)に入るような強豪とは対戦をしておらず、「世界ミドル級で最低レベルの王者」と評されることも少なくなかった。現WBAスーパー、WBC世界ミドル級王者の「カネロ」ことサウル・アルバレス(メキシコ)やゴロフキン、ダニエル・ジェイコブス(米国)ら世界の猛者とは残念ながらレベルが違うと言わざるを得ない。
だからトップランク側は今回、初めて村田が遭遇する本格的なアウトボクサーとはいえ、勝てそうな見込みの高い「アンダードッグ」として無名のブラントとの試合をチョイスしたのであろう。それでいざ試合においては村田優位の下馬評を完全に覆されてしまったのだから、本人を含めて陣営側の衝撃度は計り知れない。
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