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» 2018年10月26日 07時00分 公開

河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」:“やりがい搾取”に疲弊 保育士を追い詰める「幼保無償化」の不幸 (1/5)

消費増税まであと1年。同時に「幼児教育・保育無償化」も始まる。しかし「保育士の7割が反対」という調査結果が示され、受け皿の不足と負担増加が懸念されている。このまま無償化するのは「保育士は灰になるまで働け!」と言っているのと同じなのではないか。

[河合薫,ITmedia]

 「貧乏人は必死に耐えて生きろ!」と言わんばかりの消費増税まであと1年。同時に、「保育士は灰になるまで働け!」ってことになりかねない幼児教育・保育無償化が始まります。

 「無償化」といえば聞こえはいいですが、無償化を進めるための「受け皿」の整備は一向に進んでいません。利用したい人が増えても保育士の確保はできていない。こんな状況下で懸念されるのは、保育士の負担の増加です。

 実際、共同通信が8月に全国の自治体に行った調査では、回答した81自治体のうち「賛成」は半数未満の36自治体。「無償化自体は悪いことではないが、まずは保育施設の整備や保育士の確保、養成を進め、受け皿を整えるのが先」というのが、多くの自治体の見解です。

 また、保育士・幼稚園教諭の有資格者を対象にしたアンケートでは、67.1%が「反対」と答え、82.8%が「無償化より保育士の確保」を求めていることが分かりました(ウェルクス調べ)。

 「無償化への不安要素は何か?」という問いには(複数回答)、

  • 「業務負担の増加」が74.0%でトップ
  • 「保育の質の低下」(69.7%)
  • 「待機児童の増加」(51.1%)

 と続いています。

photo 2019年10月に始まる幼児教育・保育無償化。育児負担が軽減される一方、保育施設の整備や保育士の確保などは進んでいない(写真提供:ゲッティイメージズ)

 保育士さんといえば、低賃金に加え、重労働。「自分の子」のことしか考えないモンスターペアレンツへの対応を迫られるなど、年々、職場環境は過酷さを増しています。厚生労働省によれば、保育士の登録者は2011〜16年度で33万人増えた一方で、資格はあるが働いていない「潜在保育士」が18万人も増加し、16年度は計86万人いると推計。さらに、15年10月からの1年間で約2万9000人の保育士さんが離職しました。

 こんな状況下で無償化をスタートしていい……わけがありません。

 そもそもこれだけ「女性活躍だ!」「女性が輝く社会だ!」と、国も企業もスローガンを掲げているのに、なぜ、保育士さんの職場環境改善は一向に進まないのか?

 ホントに残念なことではありますが、「保育士は灰になるまで働け!」というのが本音では? などと思えてなりません。

 灰。そうです。燃え尽きた灰。燃え尽き症候群に陥る保育士さんが量産されやしないか、と心配なのです。

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