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幻の鉄道路線「未成線」に秘められた、観光開発の“伸びしろ”杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/6 ページ)

» 2018年11月02日 07時30分 公開
[杉山淳一ITmedia]

岩日北線(山口県岩国市)

 錦川鉄道の「とことこトレイン」として知られている。岩日線は山陽本線の岩国と山口線の日原駅を短絡する陰陽連絡線として計画された。このうち、岩国駅の隣の川西駅から錦町駅までは国鉄時代の63年に開通した。錦町駅から北側の延伸区間が「岩日北線」と呼ばれた。

 4キロ超のトンネルなども開通し、路盤もほとんど完成したけれども、国鉄赤字問題によって80年に工事凍結。開業済み区間も廃止論議を経て、第三セクターの錦川鉄道となった。このうち、岩国市内の雙津峡温泉付近までが遊覧鉄道の「とことこトレイン」となった。タイヤで走るトレーラーが客車をけん引して走る。毎週末や学校の長期休み期間の運行で、観光シーズンには錦川鉄道本体よりも集客しているという。

photo 未成線観光の成功例の一つ、岩日北線「とことこトレイン」(許可を得て撮影)
photo 「とことこトレイン」名物のトンネルイルミネーション。雨天でも楽しめる

高千穂あまてらす鉄道(宮崎県高千穂町)

 JR九州の高千穂線の廃線でトロッコ車両を運行している。軽トラックのエンジンを積み替えた機関車で客車をけん引する。現役時代、水面から高い位置にあるという高千穂橋梁を通過するなど、この区間だけを取り上げれば廃線観光である。ロストライン協議会にも参加していた。しかし、高千穂線は国鉄時代に高森線(現・南阿蘇鉄道)と接続する計画だった。つまり、高千穂と高森を結ぶルートを視野に入れると未成線の仲間入りとなる。高千穂あまてらす鉄道の目標は廃線観光ではなく、鉄道路線復活だ。

北九州銀行レトロライン(福岡県北九州市)

 「門司港レトロ観光線潮風号」として知られている。旧鹿児島本線の貨物支線を再利用した路線だ。ルートはJR門司港駅近くの九州鉄道記念館から関門海峡めかり駅まで。南阿蘇鉄道から譲り受けた機関車と、島原鉄道から譲り受けたトロッコ客車で構成されている。こちらもどちらかというと廃線観光の分野である。運行は平成筑豊鉄道が行っており、門司港レトロ地区と関門海峡を結ぶ列車は観光客に人気だ。

 「北九州銀行レトロライン」は未成線ではないけれども、平成筑豊鉄道沿線の会合という意味合いの参加かもしれない。門司港トロッコ応援団と赤村トロッコボランティアを掛け持ちする人もいる。赤村トロッコと組み合わせた観光アピールもできるだろう。

photo 北九州銀行レトロライン「潮風号」。終点の関門海峡めかり駅から関門トンネル人道入口は徒歩10分

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