世界で100社がひしめき合う! 過熱する小型ロケットの商業打ち上げ宇宙ビジネスの新潮流(2/2 ページ)

» 2018年11月17日 08時45分 公開
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新たな国々も参入

 宇宙大国ではない新たな地域からの参入もある。オーストラリアで13年に創業した小型ロケットベンチャーの豪Gilmour Space Technologiesは、20年までに最大380キログラムの小型衛星を地球低軌道に打ち上げることを目標にしており、複数の異なる燃料を活用する小型のハイブリッドエンジンを開発中だ。

 また、英国は積極的な宇宙産業育成を行っており、そのテーマに小型ロケットも含まれる。英Orbexは英国に本社を構えて、デンマークとドイツに拠点を持つベンチャー企業だ。小型ロケット「Prime」を開発しており、その能力は重量100〜220キログラムの衛星を200〜1250キロメートルの高度へと打ち上げることを想定している。

英Orbexの打ち上げサービス(出典:Orbex) 英Orbexの打ち上げサービス(出典:Orbex)

 先日、英国初の垂直打ち上げ射場としてスコットランド北にあるサザーランドが選定されたが、その打ち上げサービス事業者がOrbexだ。すでにESA(欧州宇宙機関)などからも出資を受けるなど、資金的支えもある。

日本でもさまざまな動き

 日本でも小型ロケットを開発する動きがある。そのひとつがキヤノン電子、IHIエアロスペース、清水建設、日本政策投資銀行の合弁企業であるSpaceOneだ。同社は21年度中の事業化、および20年代半ばに年間20機を打ち上げ予定だ。目指すのは契約から打ち上げまで「世界最短」と、打ち上げの「世界最高頻度」だ。

 また、堀江貴文氏が創業者のインターステラテクノロジズも開発を進めている。

 このように世界で競争が激化する小型ロケット市場だが、今後1年から1年半のうちに厳しい淘汰が予想されるとの見立てもある。今回の商業打ち上げの成功で実現された小型ロケットによる衛星打ち上げサービス。今後の動向に注目したい。

著者プロフィール

石田 真康(MASAYASU ISHIDA)

A.T. カーニー株式会社 プリンシパル

ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、15年のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。日本初の民間宇宙ビジネスカンファレンスを主催する一般社団法人SPACETIDE共同創業者 兼 代表理事。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。著書に「宇宙ビジネス入門 Newspace革命の全貌」(日経BP社)。

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