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» 2018年11月20日 08時00分 公開

スピン経済の歩き方:「宇宙の謎に迫る国家プロジェクト」に、日本学術会議が猛反発のワケ (5/6)

[窪田順生,ITmedia]

「ねたみ」や「そねみ」が抑えられない

 そんな状況の中、日本の国際競争力のためと推進されているのがILC計画だ。ここで行われる研究は「宇宙の謎」という壮大なスケールだけあって、すさまじいスケールの費用がかかる。

 まず、完成までの10年で総工費は7355〜8033億円。国際協力プロジェクトなので、その半分はさまざまな国に負担をしてもらう構想だが、それでも1年に400億円かかる。そして、できたらできたで今度は、運転や維持に年間200億円程度のコストがかかる見込みなのだ。

 そんなにかかるのかと驚くかもしれないが、もっと驚くことを言ってしまうと、これはすべて我々の血税でまかなわれるのだ。

 さて、ここまで話せば、もう何を言わんかお分かりいただけるだろう。多くの研究者が国から満足な研究費をもらえなくて不満が募っている。そんな中で毎年、数百億円というケタ外れの税金が投入され、素粒子研究の施設が造られる。露骨な「えこひいき」である。

 その「科学的意義」を審議しろ、と素粒子研究に携わっていない研究者たちがお役所から頼まれた。果たして、彼らに冷静かつ客観的な審議ができるだろうか。

 できるわけがない。甲子園を目指す野球部や、全国を狙えるサッカー部に潤沢な予算がつけられるのを、恨めしそうに眺める他のマイナー競技の生徒たちに、「野球やサッカーの良いところをみんなで言い合ってくれ」という無茶ぶりをするようなものであって、「悪口大会」になるのは目に見えている。

 筆者もこれまでいろいろな研究者の取材をさせていただいたのでよく分かるが、研究者の皆さんは「自分の研究が一番」だと思っている。自分の研究こそが世界を変える、社会に役に立つという強い信念を持って日々、研究に勤しむ方も多い。

 そのような研究者からすれば、ILC計画ほど不条理な話はない。どんなに立派な科学者であっても人間である以上、どうしても「ねたみ」や「そねみ」が抑えられないものなのだ。

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