「資本金は妻から借りました。200万円」
そう聞くと、確かに満を持しての起業ではなかったというのも分かるかもしれない。しかし、彼の場合は一期目から黒字だった。
「最初凹む(赤字を出す)かたちの事業はおすすめしません。凡人じゃなければそれでもいいのかもしれませんが。(将来に)投下していることで赤字なのはいいと思うが、何もしない段階で赤字なのはダメ。黒字になる見込みがたってから起業するべき。起業せざる得ない状況になったときに、勤め先の社長に(顧客を分けてもらえるよう)提案した。前の会社から商流を分けてもらえたのはラッキーだったが、前職の人脈を使うのは誰でもできるはず」
最初から黒字が見えているなんて、それは特別だろう、と思うかもしれない。しかし、小原さんがわざわざこう話すのは、現在、黒字が見えていない事業でも簡単にお金が集まってしまう状況にあるからだ。
1990年代は、スタートアップというような言葉はなく、起業家が起こした会社は中小企業の扱いだった。金融機関からの借り入れも難しく、借りられたとしても社長が保証人となるのが当たり前。リスクの高い事業に出資してくれるベンチャーキャピタルも一般的ではなかった。そんな中、なんとか成功させた先駆者たちが、上場や大企業への売却という道を切り開いてきた。その後、2010年前後のスマホシフトが始まるタイミングで創業した企業が、IPOや売却を成功させた。そして創業者たちは、エンジェル投資家として新たな事業への出資を始めている。エコシステムができてきていると小原さんは言う。
「現在、初期段階でもエンジェル投資家から2000万円くらいは投資してもらえると思います。でも、資金調達しやすいがゆえに、お金を溶かしやすくなっている」
だからこそ、小原さんはビジョンよりも着実な事業にこだわる。
「社会に共感されそうなもので、自分の願望をかなえるものをやりたいという方は多い。バットを長く持ってホームランを狙っていけという方も多い。社長の仕事はビジョンだと明言されていることも多い。でも、社長は社員を抱えています。無責任にビジョンを持って潰れるのは困る」
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