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» 2018年11月30日 07時00分 公開

“パワハラ放置”社会が「子どものいじめ」を増長? 「見て見ぬふり」の大きな代償河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(5/5 ページ)

[河合薫,ITmedia]
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子どもたちに伝染する「見て見ぬふり」

 実に残念かつ恐ろしいことではありますが、いじめにはある種の快楽が伴います。いじめをしている間は「自分は相手より上」と感じられるので自尊心が満たされる。それが心地よいのです。しかも、人には「快楽を繰り返したい」という欲求があるため、「攻撃(いじめ)→快感→攻撃→快感」といった“魔のいじめスパイラル”に取り込まれる可能性が存在するのです。

 さらに、いじめを目撃したときの対応(「見て見ぬふりをしますか?(=傍観者)」と「止めに入りますか?(=仲裁者)」)を子どもに尋ね、英国、オランダ、日本の3カ国で比較したところ……。

  • 日本では「傍観者」の比率が年齢とともに上がり続け、中学3年では約60%
  • 一方、英国とオランダは、小学生から中学生に向けてやはり上昇するものの、中学2、3年で一転して低下。英国の中学3年の傍観者比率は約40%
  • 日本では「仲裁者」比率が下がり続け、中学3年ではわずか20%
  • 一方、英国とオランダは、年齢とともに比率は下がるものの中学1年で下げ止まり、中学3年では約45%に反転する

 ……ふむ、なんとも。中学生以上の子どもたちの言動には「社会の影響」いや、正確には「オトナ」が与える影響が大きいと考えられているので、この仮説通り解釈すれば、日本の大人たちはいじめを見ても「見て見ないふり」をし、「仲裁もしない」という、実に残念な結果が得られているのです。

 これはあくまでも一つの調査結果に過ぎません。

 しかしながら、同僚に上司からパワハラを受けていると告白したら「まぁ、うまくやれよ」と流されてしまったり、「ああいう人だから気にするな」と慰められたり、人事部に相談したら「あなたにも何か問題はありませんか?」と内省を求められたりしたという経験を語る人が、私のインタビューに協力してくれた人の中にもいました。

 誰だって、自分がターゲットにはなりたくないし、関わりたくないという気持ちが勝ることもあるかもしれません。

 しかしながら、そんな見て見ぬふりをする同僚たちの行動が、“彼ら”をさらに追い詰め、子どもたちに伝染しているとしたらいかがでしょうか。

 他のメディアになりますが、「何がパワハラで、何がパワハラじゃないのか」の具体的な事例はこちらに詳細に書きましたので、参考にしてください(参考記事)。

 自分や子どもが加害者にならないためにも……。

河合薫氏のプロフィール:

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 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。

 研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)


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