品川駅を南に進むこと約1.5キロ。ここに直径約36メートル、深さ約90メートルの「巨大な穴」がある。
地面と垂直に掘られており、地上から穴の下を除くと、穴の底にいる作業員らが米粒ほどのサイズに見え、足がすくむ。現場のすぐ横には、東海道新幹線、山手線、横須賀線、穴を挟んで反対側には東海道本線、京浜東北線が走っている。
この「巨大な穴」は2027年に開通予定のリニア中央新幹線(品川〜名古屋間。2037年には名古屋〜大阪間も開通予定)の工事の一環で開けられた「立坑(たてこう)」と呼ばれるものだ。都市部では、リニアは地下を走行するが、地上と垂直に掘られたこの穴はリニアが走行するトンネルではない。
この立坑の底面はシールドマシンによるトンネル掘削工事の発進地点であり、地上からクレーンでシールドマシンの各パーツを搬入して底面で組み立て、リニアが走行するトンネルを掘り進めることになる。この立坑は、リニア中央新幹線の営業開始後、トンネル内の換気や異常時の乗客避難、保守作業などに使用されるのだ。
エレベーターで穴の中に入り、深さ90メートルの底面から空を見上げると、何だか不思議な感じがした。高層マンションが一つすっぽりと入ってしまいそうな深さの「地下世界」にいると、さながら「秘密基地」の中にいるような感覚を覚えたのだった。
こうした都市部の非常口(立坑)は約5キロおきに設置され、東京都内に4カ所(北品川、東雪谷、小野路、上小山田)、神奈川県内に5カ所(等々力、梶ヶ谷、犬蔵、東百合丘、片平)、愛知県内に4カ所(坂下、神領、勝川、名城)に建設される。
工事現場には鉄道のほか、地下に首都高中央環状品川線が近接していることもあり、難易度の高い工事だという。
JR東海中央新幹線建設部土木工事部の吉岡直行担当部長は「関係者のご協力のおかげで工事は順調に進んでいます」と話す。これからシールドマシンによるトンネル掘削工事などの工事が控えるが「工事の安全、環境保全、地域との連携を重視しながら、着実に工事を進めていく」と続けた。
リニアの工事は着工してから約4年が経過。各地で着々と工事が進められている。リニアが開通すると、品川〜名古屋間が40分、品川〜大阪間が67分と大幅に移動時間が短縮され、日本の社会、経済に大きなインパクトを与えることが予想される
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