QRコード決済の普及に向けた課題とは?キャッシュレス普及の切り札となるか?(3/4 ページ)

» 2018年12月03日 08時00分 公開
[八巻渉ITmedia]

 もちろん、このユーザー体験がマッチするケースもある。例えば、タクシーの事前支払いや乗車時支払いにQRコード決済を利用する場合だ。タクシーは、目的に到着したときに支払いを行うが、Japan TaxiのQRコード決済を使えば、移動中に決済が行い、目的地に到着すればすぐ降りることができる。このように、事前決済という仕組みをうまく組み合わせれば、この問題は解決するかもしれない。

 ここで、ヤフーのPayPayが、100億円を使った過激なキャンペーンを開始することを発表した(スマホ決済PayPay、総額100億円の“ばらまき企画”開催 還元率「20%」で爆発的普及目指す)。ある一定期間、PayPayで支払いを行えば、20%還元する、というもの。確かに20%という数値は魅力的で、このキャンペーンでどこまでQRコード決済の体験が拡がるか見ものだ。

 3つ目は、事業者のビジネスモデルの課題だ。冒頭で、IT企業が提供しているものと、銀行が提供しているものがあると述べたが、この二つは消費者から加盟店へのお金の流れが異なっている。大きな違いは、IT企業が提供しているQRコード決済の場合、銀行口座やクレジットカード、現金からの「チャージ」という行為が必要な点だ。

 日本では、ウォレットへのチャージコストが非常に高い。電子マネーの平均チャージ単価である5000円をチャージするのに、100円程度かかる場合が多いのだ。この時点で既に2%のコストがかかっており、さらに消費者へのポイントバックといったインセンティブ費用も必要なことを考えると、なかなか事業として成り立たせるのは難しい。

 銀行であれば、直接自行の口座からお金を移せば良いので、そのコストがかからない。そのため、銀行系のQRコード決済のほうがビジネスモデル上の優位性はあると筆者は思っている。ただし一方で、銀行には十分な顧客基盤(アプリを普及させられていない)がない、加盟店営業力が乏しい、といった別の課題もある。

 ちょうど全国の銀行や地域金融機関などの銀行連合が、2020年4月からQRコード決済を本格稼働すると発表した。ビジネスモデル的には優位だと考えるが、あまりにも遅いのではないか? とも思う。その頃には決着がついているかもしれない。

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