「人脈を会社全体で共有して資産にする」(常樂さん)というコンセプトの元、同社のサービスは今後、「社外の誰に」だけでなく「社内の誰が」アプローチすべきかという領域にも進みつつある。
例えば現在開発しているのが、保有している名刺を元にその社員の強み、特性を分析する機能だ。社外で高い地位にある人間の名刺を多く持っている社員なら「大御所」、新しい分野に属する人間に強い社員なら「開拓者」など、いくつかの指標ごとに社員の得意度を数値化する。結果、「多業種を知る社内キーマン」などと、名刺を通じて分かるその社員のタイプを分かりやすく可視化するという。
さらには保有する名刺に記載されていた企業のWebサイトのURLを元に、個々の社員がどんな業界やジャンルに強いかを可視化する機能も開発中だ。Webサイトの情報から「広告」「建設」といった顧客企業の特性をキーワードとして抽出。多く該当したキーワードをその社員の「強み」として表示するという。
まだ実験段階だが、常樂さんは「ある企業に攻め込む際、誰が担当としてふさわしいのか選ぶ下地となる分析ができる」と説明する。特に人数が多く、所属する社員全員の得意分野を管理職が把握するのが難しい大企業で営業戦略を立てる際、威力を発揮するとみる。
これらの「人×人」のマッチングだけでなく、Sansanでは「商品×企業」の最適な組み合わせを導き出すサービスも構想している。詳細はまだ検討中というが、帝国データバンクといった企業情報に強い会社と組むことで、顧客企業の「規模」「業種」、営業や技術などの「強み」といった特性をプロファイリングする。この企業にはどんな商品が売り込みやすいかといった営業のアプローチ方法を解析する技術も研究中という。
「うちでも朝から晩まで営業部隊が電話をかけてサービスを売り込んでいるが、アポが取れるのは(電話した回数の)数パーセントだ。人や会社の間の“出会い”にかける労力が無駄になっている。うちは究極的にはマーケティングや営業の世界が無くなってもいいくらい、それらがうまくマッチングするようにしたい」(常樂さん)。
同社では今後、こうしたマッチングのシステムを開発する中で「人×企業」、つまり転職サービスへの転用も視野に入れているという。名刺というアナログな情報をデジタルな情報に変換してきたSansan。勘や偶然に支配されがちなビジネス上の出会いもまた、デジタルで最適化できるだろうか。
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