ソ連で生まれた1100代目の「ハエ」が、なぜ注目されているのか水曜インタビュー劇場(45年以上前公演)(2/7 ページ)

» 2018年12月05日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

会社が傾き、イエバエを世話することに

ムスカはイエバエの選別交配を行っている

土肥: 世の中には、たくさんの数の職業がありますよね。厚生労働省によると、職業は1万7000種類ほどあるそうですが、串間さんはなぜハエの選別交配に注目したのでしょうか?

串間: 旧ソ連の科学技術を購入して、日本企業などに紹介する「アビオス」という商社があるんですよね。現地に足を運んで、そこで面白そうな技術があれば、契約書を交わす。こうしたことを繰り返しているうちに、1000ほどの技術を持つことに。その中の1つに、イエバエ事業がありました。

 会社は権利を取得して、日本の企業などに売る。いわゆる転売ビジネスを展開していたのですが、先代の社長は「完全循環型リサイクル農園」をやりたかったんですよね。どこにでもあるようなトマトをつくっても、価格競争に陥るだけ。そうした状況に陥らないために、ブランド力のあるモノをつくらなければいけない。そのために「いい飼料」と「いい肥料」を探していたところ、「ロシアにスゴい技術があるよ」といった話を聞いたそうです。

土肥: ひょっとして、それがハエ?

串間: はい。20年ほど前にイエバエを購入して、自分の農園づくりに生かそうとしていました。テレビでその様子が報道されていて、それを見たワタシは衝撃を受けました。当時、中部電力で働いていたのですが、「自分がやりたかったことはこれだ!」と確信して、会社に辞表を提出することに。23歳のときですね。

 新しい会社に就職して、ハエの事業に携わりたいなあと思っていたのですが、電力会社でちょっと働いたくらいの人間ができる仕事ではありません。会社にはロシア部隊とハエ部隊がありまして、ワタシはロシア部隊に配属されました。

イエバエの製造室

土肥: ということは、現地に足を運んで、面白そうな技術を購入していたわけですよね。それなのに、なぜハエ事業に携わることに?

串間: 先代が体調を崩して、会社の資金繰りがうまく回らなくなりました。給与の支給が遅れることもあって、1人、2人と辞めていくことに。従業員が減っていたので、イエバエに手が回らなくなってきたんですよね。交配を重ねて品種改良を行っているので、手を止めてしまうと、それまで築き上げてきたものが途絶えてしまう。というわけで、エサをあげたり、重量を測ったり、品質管理をしたりしていました。

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