耳元でプーン。オフィスや家のなかで、ハエが飛んでいてイライラしたことがある人も多いのでは。汚いイメージもあるので、「この世からいなくなればいいのに!」と思ったことがあるかもしれないが、そのハエに“お宝”が眠っているかもしれないのだ。
「はあ? なにバカなことを言ってるの? ハエは害虫。百害あって一利なし」と突っ込まれそうだが、なにもテキトーなことを言っているわけではない。福岡市に本社を構える「ムスカ」という会社が、ハエの一種「イエバエ」の幼虫を利用して、飼料や肥料を大量生産する予定なのだ。
ムスカといえばアニメ『天空の城ラピュタ』に登場するムスカ大佐を想像するかもしれないが、この会社はどんなことをしているのか。ひとことで言えば、選別交配を繰り返しているだけ。
「繰り返している」といっても、100回や200回といった話ではない。45年前、旧ソ連が宇宙開発の一環でイエバエを研究していて、それに目をつけたアビオスという会社が、20年ほど前に買い取る(その後、イエバエ事業をムスカが引き継ぐ)。六本木ヒルズがオープンしようが、リーマンショックが起きようが、ひそかに交配を重ね続けていて、現在研究室に生息するイエバエは1100代目なのだ。
ここまで読んで、次のような疑問を感じた人もいるはず。「なぜ45年間も選別交配を続けているのか」「1100代目のハエはどうなっているのか」「ハエを飼って、どうやって稼ぐのか」など。記者も同じ疑問を抱いたので、同社で会長を務める串間充崇さんと、暫定CEOの流郷綾乃さんに話を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。
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