成功のキャリア観はもう古い? 健やかさのキャリア観へ次代のキャリア観(1/4 ページ)

» 2018年12月10日 10時04分 公開
[村山昇INSIGHT NOW!]
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 振り子の一端に「成功のキャリア」があり、また別の一端に「自己防衛のキャリア」が生じる。この2つの極の間の適当なところで折り合いをつけていくというのではなく、両者を止揚(しよう)したところに「健やかさのキャリア」があります。この「健やかさのキャリア」こそ、次代の大切なキャリア観として育まれるべきものではないでしょうか。

 人生100年時代を迎え、働き方改革以上に大事になるのが、どのようなキャリア観を持つか。これまでビジネスパーソンの間では、「成功を目指すキャリア」観が主流だったように思います。「キャリア」という言葉にどこかしら出世や有能さを伴ったニュアンスがあるのもそのためではないでしょうか。しかし、その反動として「自己防衛のキャリア」というものが生じてきました。しかし、これからの時代、私は第三の構え方となる「健やかさのキャリア」が必要になってきていると思います。

 「いまどきの若い社員は、とかくプライベート優先で……」「仕事を自分ごとにすることを避けて……」「打たれ弱くて……」「労働条件のよいところを選り好みするように簡単に転職していくので……」。

 「いまどきの若い世代は〇〇で……」というフレーズは、いつの時代にも先行世代が口にするものですが、キャリア形成意識に関わる研修を受託する私が昨今、企業の人事育成担当者から耳にするのは上のような言葉です。

 もちろん個人差はあり、こうでない若い世代もたくさんいるでしょう。ですが、全体的にはこうした傾向が強まっているのが現実かもしれません。

 私は、こうした一種の保守化傾向はある面からながめて当然のことだと感じています。つまり、戦後の高度経済成長期からバブル経済崩壊を経てもなお、ずっと「成功のキャリア」というものが称揚されてきました。社会も企業も、そして個人の大多数も、この「成功のキャリア」観によって、勤労意欲を燃やしハッピーになれた時代は確かにありました。が、これが行き過ぎると当然、反動も生まれてきます。

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