ガンダムの世界を舞台に、現実の経済学や歴史などを用いて解釈、分析する連載「ガンダム経済学」。回を重ねるごとに、思わぬ場所で読者とお会いすることができ、賛否両論、叱咤激励などさまざまなご意見・ご感想をいただく。筆者にとっては望外の喜びである。
まれにアニメのBlu-ray Boxやガンプラを衝動買いしてしまった、といった類の苦情をいただくが、筆者の原稿料もバンダイ、サンライズの売り上げに消えており、お互いさまということでご容赦いただきたい。
本執筆中に、“動く”実物大ガンダムや、「閃光のハサウェイ」を三部作で映画化するニュースがリリースされた。「ガンダムは、日本が世界に誇る最強のアニメコンテンツ」(林文子横浜市長)。他を圧倒する息の長い訴求力を持っており、ガンダムは伊達じゃない。
18メートルの実物大ガンダムが動く「ガンダム GLOBAL CHALLENGE」プロジェクト(出典:公式サイト)
おっと、つい熱くなってしまった。さて、今回そして次回は、ガンダム作品の敵役であるジオンとその系譜を題材に、「国力」について考察しようと思う。
ガンダムの登場は、ジオン公国と地球連邦政府の間で勃発した、後に「一年戦争」と呼ばれる戦争を契機としている。一年戦争は、スペースコロニーに居住するスペースノイドの自治・独立を要求したジオン公国が、地球連邦政府に宣戦を布告したことに始まる。
短期決戦を企図したジオン軍は、人型機動兵器モビルスーツ(MS)を実戦投入。開戦当初こそ、地球連邦軍の宇宙艦隊を軸とした大艦巨砲主義をMSの機動力で圧倒し、地球、そして幾多のスペースコロニーに甚大な被害をもたらしたが、作戦の要となる「コロニー落とし」で地球連邦軍本部ジャブローを破壊することには失敗する。
ジオン公国の国旗=『機動戦士ガンダム THE ORIGIN VI 誕生 赤い彗星』より
国力に劣るジオン軍は決め手を欠き、一方、地球連邦軍は戦力の立て直しに迫られているという膠着(こうちゃく)状態の中で実戦投入されたのが、地球連邦軍の最新鋭MSガンダムである。
ガンダム1機でジオン軍MSザクを100機撃墜したと喧伝されるほどの活躍もあり、宇宙世紀0079年1月3日に開戦した一年戦争は、同年12月31日に最終決戦を迎え、翌0080年1月1日は地球連邦政府とジオン公国から政治体制を移行したジオン共和国との間で終戦協定が結ばれる。文字通りの一年戦争であった。
一年戦争はジオン公国の敗北に終わったものの、地球連邦軍とジオン軍に連なる後継組織との戦闘が、「機動戦士ガンダム」(宇宙世紀0079年)から最新作である「機動戦士ガンダムNT」(宇宙世紀0097年)へと続くことになる。
ガンダムに詳しくない読者のために、主な作品と勢力の対立関係をまとめると以下のようになる。
- ガンダムの宇宙世紀でインフレは起きたのか?
来年にアニメ放送40周年を迎え、今なお人気が衰えない「機動戦士ガンダム」。こうしたSFの世界において政治の駆け引きが描かれることはよくあるが、その世界の経済に関する視点はあまり例を見ない。新連載「ガンダムの経済学」では、日銀出身のエコノミストがさまざまな側面からガンダムの世界の経済を大胆に分析する。
- ガンダムの「姫」、セイラ・マスはなぜ投資で成功できたのか?
「機動戦士ガンダム」に登場するセイラ・マスは、かつて医学の道を目指していたが、後に投資で活躍していることが明らかになる。彼女はなぜ投資で成功できたのだろうか? さまざまな視点から分析しよう。
- ガンダムの月面企業、アナハイム・エレクトロニクスの境地
ガンダムの世界の中では、月も大きな存在感を発揮する。連載「ガンダム経済学」第2回目は、月面都市「フォン・ブラウン」と、その地における最大企業、アナハイム・エレクトロニクスの経済活動に焦点を当てたい。
- ヤン・ウェンリーが込めた思い 組織のためではなく、自分のために働け
SF小説「銀河英雄伝説」は組織の戦略や戦術などが深く学べるとあって、バイブルにしているビジネスパーソンも多い。本連載では、作品に登場するさまざまな名言を題材に、現代のビジネスシーンや企業組織にどう落とし込んでいくのかを考えていく。
- なぜ安室奈美恵は私たちの心を揺さぶり続けるのか?
歌手の安室奈美恵さんが引退する。メジャーデビューから26年、「平成の歌姫」と呼ばれた彼女は、全力で歌い、踊り続け、多くの人たちから愛されてきた。引退を目前に控えて、今再び安室フィーバーが起きている。安室さんの何がここまで私たちを引き付けてやまないのだろうか。
- 銀行員“受難”の時代にどう生き残るか 「ジェネラリスト」はもういらない
2017年11月、メガバンク3行が大規模な構造改革に踏み切ると発表した。三井住友銀行は約4000人分の業務量、三菱UFJ銀行は約6000人、みずほ銀行は約1万9000人に上る人員削減計画を打ち出し、世間のみならず銀行員自身にも大きな衝撃を与えた。
- 35歳でフリーライターになった元公務員が踏んだ「修羅場」
公務員の安定を捨てて独立する――。希望の道に進むのは素晴らしいことではあるものの、そのプロセスは決してバラ色ではない。独立を切り出したとき、妻や母、職場の上司など、「周囲」はどう反応したか。35歳で公務員を辞めてフリーライターになった小林義崇さんに、当時の苦悩を振り返ってもらった。
- 就活をやめてエストニアへ そこで私が確信した日本と世界のキャリア観の決定的な違い
普通なら就職活動真っ只中の期間である大学3年生の1月から大学4年生の6月までの約半年、就活を中断してエストニアに留学中の筑波大学4年生、齋藤侑里子さん。そんな彼女が現地で感じた、日本の就活への違和感、グローバルスタンダードなキャリアの築き方とは――。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.