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「専業主婦バッシング」が、日本社会のブラック化につながってしまう理由スピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2018年12月18日 08時38分 公開
[窪田順生ITmedia]

専業主婦の皆さんは「最も生かしきれていない人材」に

 13年4月19日の「成長戦略スピーチ」が分かりやすい。

 『優秀な人材には、どんどん活躍してもらう社会をつくる。そのことが、社会全体の生産性を押し上げます。現在、最も生かしきれていない人材とは何か。それは、「女性」です。女性の活躍は、しばしば、社会政策の文脈で語られがちです。しかし、私は、違います。「成長戦略」の中核をなすものであると考えています。女性の中に眠る高い能力を、十二分に開花させていただくことが、閉塞感の漂う日本を、再び成長軌道に乗せる原動力だ、と確信しています』(首相官邸の公式Webサイト)

 この発言からうかがえるのは安倍政権が、専業主婦の皆さんを「最も生かしきれていない人材」だと捉えており、それどころか暗に「閉塞感」や「生産性の低さ」の原因のように見ているということだ。

 さて、このような「人材活用」としての「女性」という構図を見ると、「ん? こんなの最近、どっかで見たな」とデジャブ(既視感)に襲われる方も多いかもしれない。

 そう、マスコミが「外国人活用法案」と呼んだ出入国管理法改正案によって、これから日本の労働現場に大量に入ってくる「外国人」と丸かぶりなのだ。

 本連載の『だから「移民」を受け入れてはいけない、これだけの理由』などでも再三指摘をしてきたが、この法案の最大の欠陥は、ブラック企業問題や、低賃金・低待遇を改善しなくとも、産業界の求めるままに、労働力を増やせさえすればバラ色の未来が待っているという、すさまじい「勘違い」にある。

共働き世帯、10年で10.8ポイント増(出典:しゅふJOB総研)

 低賃金や低待遇で働いてくれる外国人労働者が増えれば、現在のブラック企業問題は解決されないどころかさらに深刻化していく。また、外国人側も当然、我々と同じく、より高い賃金、より良い待遇を求めて離職するので、現在のような「雇用ミスマッチ」がさらに複雑化していくだけだ。

 また、奇妙な死に方をする技能実習生がいたり、中国やベトナムから働きに来た方がセクハラやパワハラを訴えている。なぜこんな悲惨な状況になるのかというと、海外の悪質なブローカーが、貧しい自国民に借金を背負わせて、日本のブラック企業へと送り込む流れもできているからだ。

 つまり、今も日本を悩ませる、慰安婦や徴用工の問題と同じことが繰り返されており、我々の子どもや孫の世代に、非常に深刻な人権問題を引き起こす恐れが極めて高いのだ。

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