「家計が苦しいとか言うなら、夫だけじゃなく自分自身でも働けばいいのに」「家事と育児だけで忙しいなんて甘えている」――。もちろん、世の中にはいろいろな考え方があっていいのだが、中には専業主婦という生き方を全否定するような声もある。
このような風潮はかなりマズい。
専業主婦をボロカスに叩いても、ワーキングママが増えることはない。むしろ、働く女性たちの賃金や待遇は今まで以上に悪化する。要は、女性たちにとって、「社会のブラック化」が進行してしまうのだ。
一体どいうことかを分かっていただくには、まずは現在の「専業主婦バッシング」の正体を見極めないといけない。
歴史を振り返れば、専業主婦が叩かれるムードの盛り上がりは、これまでもたびたび起きている。20年ほど前にも、『くたばれ専業主婦』なんて本が話題になったこともあるように、「専業主婦は家畜以下」なんてディスる女性はたびたび登場し、世の注目を集めてきた。が、この数年のムードはそれらと全く趣が異なってきている。
働くママは仕事と子育ての両立で毎日大変だ、というパブリックイメージが定着し、その問題にフォーカスが当たれば当たるほど、「外で働いていないママ」は「なんで外に働きに出ないの?」「共働き家庭で普通にやっているのをなんでひとりでやるの?」という社会からの「無言の圧力」が強くなっているのだ。
そんなのはお前の気のせいだと思うかもしれないが、現在の日本は「ワーキングママ」や「ワンオペ育児」というキーワードが社会問題として大変な注目を集め、「保育園落ちた、日本死ね」なんて働くママの怒りで、政治やマスコミが動く、ことに異論はないだろう。このような「働くママを支えろ!」の大合唱の中で、一部の専業主婦の方が肩身が狭いと感じても特に驚くような話ではないのだ。
このような遠回しの「専業主婦ネガ風潮」ができ上がったのが、一体いつなのかとたどっていくと、やはり第二次安倍政権が果たした役割が大きい。第一次安倍内閣時には、女性を「子どもを産む機械」なんて発言をした閣僚がいたように、とにかく戦前のような産めよ増やせよ、と音頭を取っていた。しかし、民主党に政権を奪われた後はガラリと方針転換。人が変わったように、成長戦略の柱に「女性の社会進出」を掲げ始めたのである。
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