2018年に乗った特筆すべき日本のクルマ(前編)池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)

» 2018年12月25日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

 2018年もいろいろなクルマの試乗会に行った。もちろん全ての試乗会に呼ばれるわけではないので、あくまでも筆者が試乗した範囲で「特筆すべきクルマ」について振り返りたい。

 発売のタイミングで並べると以下のようになる。CX-8はぎりぎり17年の発売ながらタイミング的に今年にカウントした。

マツダ・CX-8 12月14日発売

スバル・フォレスター 6月20日発売

ダイハツ・ミラ・トコット 6月25日発売

トヨタ・クラウン 6月26日発売

トヨタ・カローラ・スポーツ 6月26日発売

スズキ・ジムニー 7月5日発売

マツダのCX-8は17年末の発売だが、今年にカウントした マツダのCX-8は17年末の発売だが、今年にカウントした

 全体を振り返ると、日本のクルマが今でも進歩し続けていることを改めて実感する。かねてより日本車は生産品質や信頼性に優れ、燃費や耐久性でも強みを発揮してきた。しかしそうは言っても、欧州車には欧州車の、米国車には米国車ならではのテイストがあって、長らく日本車はそういう日本車ならではのテイストがないことで低い評価に甘んじてきた。どうしたら日本独自の日本車にしかないテイストを作れるのかが課題だったのだ。

 しかし、世の中の方が先に変わった。今や、そういうドメスティックなテイストではなく、グローバルスタンダードというたった1つの基準に、世界中のクルマがどんどん収斂(しゅうれん)しつつある。それは端的に言えば、従来のドイツ車に近い。日本車にとって幸いなのは無から有を作り出さなくて済むようになり、ドイツ車に近似したスタンダードを目指せば良い環境ができた。そういう明確な目標が示されると日本のメーカーは強い。

 その結果、ここ4、5年で世界の自動車勢力図が徐々に変わりつつある。長らくブランド品として君臨してきた欧州車に乗っても、「あれ、日本車より遅れているな」と感じることが増えつつある。

 しかもボディ剛性だったり、ステアリングやブレーキのフィールだったりという、かつて勝負にならなかった本質的な部分で日本車の伸びが大きい。より具体的に言えば、パワートレインでも、ステアリングでも、ブレーキでも、ピーク性能だけでなく、過渡領域の制御に目が行き届き始めているのだ。

 もちろん「日本車<欧州車」が「欧州車<日本車」にという具合に不等号記号の左辺と右辺が一気にひっくり返るということではなく、部分領域でじわじわと追いつき追い越してつつある感じだ。

 欧州車と言ってもそれぞれという面もある。少なくとも、80年代のように、一概に「日本車<欧州車」という話ではもうなくなってきた。

 では、追う立場ではなく、追い上げられる立場としてどうかと言えば、日本車を猛追してきた韓国車も中国車も、こういうテイスト領域での勝負にはまだ届いていない。世間では中国に逆転されることを恐れる声も多いが、筆者は全くそう思わない。むしろこのまま事態が進んで行くと、本当の意味で「Japan as Number One, again」が近づきつつあると思ってさえいるのだ。今、日本のクルマは歴史的に見ても相当に面白い時期にある。

 さて、それでは1台ずつ見ていこう。

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