湖池屋スコーンは「若者のスナック離れ」にどう立ち向かうのかブランドの“老朽化”防ぐ(3/3 ページ)

» 2019年01月03日 07時00分 公開
[服部良祐ITmedia]
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若者向けに振り切る

 さらに、本丸である高校生向けマーケティングで課題となったのが「情緒的価値」をどう感じてもらうか、だった。今回の高校生へのアンケートでは、スコーンに対して「濃厚」「食べ応え」といった舌などで感じられるイメージが挙がった。一方で「かわいい」「かっこいい」といった、情緒的なイメージはほとんど出なかった。

 「メインユーザーである30代なら『あの面白いCMのお菓子』というイメージを持ってくれているが、CMを知らない今の若者にはそれがない。心のつながりが欠落しているので自分たちの菓子だと思ってもらえない」(内田さん)。

photo スコーンの旧パッケージ(湖池屋提供)

 まず、赤い「スコーン」の文字でおなじみのパッケージを捨てた。商品名を大きく書いてシンプルなデザインにしたうえで、ブランド初となるマスコットキャラクターをあしらった。ゴリラ風の「ハラペコング」だ。見た目が変わっても既存ユーザーは脱落しないと踏んで、若者に受けそうな分かりやすさに振り切った。

 若者向けマーケティングの定番である、SNS上で話題になるようなキャンペーンも欠かさない。スマホを汚さずに食べれるようにと「指サック」を、「スコーンから離さないぞ」というメッセージを込めてスコーン型の抱き枕をプレゼントするWebキャンペーンを始める。「若者はスマホから離れられない生活のためスナックを敬遠している。彼らに真剣に寄り添うため解決策としてプレゼントする」(内田さん)という。

中食の拡大が脅威に

 こうした若者向けにSNS上の「バズり」を狙ったマーケティング自体は、他の菓子メーカーでも決して珍しくない。湖池屋も以前、「苺のショートケーキ味」など珍フレーバーのポテトチップスを発売して話題を呼んだ。

 ただ、今回求められているのは、かつて奇抜なテレビCMで若年層に強い印象を植え付けてきたスコーンが、今の若者にも親しまれるようにする地道で長期的なイメージ戦略だ。

 特に、内田さんはスコーンのライバルはポテトチップスですらないとみる。「コンビニの袋入りスナックの棚はどんどん狭くなっている。ホットスナックをはじめ中食のジャンルが伸びており、間食にお菓子が選ばれにくくなっているからだ。若者のスナック離れが起きている」(内田さん)。

 湖池屋は社名変更した16年、キリングループで長く商品開発を手掛けた佐藤章氏を社長に迎えて商品やマーケティング戦略を一新してきた。既に高級路線のポテトチップス「KOIKEYA PRIDE POTATO」などで成功を収めつつある。「若者のスナック離れ」の状況を逆に伸びしろと捉えて全面刷新することで、新規ユーザーの開拓につなげられるか。

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