ダイナースが生き残るために、何をすればいいのかクラブだったはず(1/4 ページ)

» 2019年01月05日 08時00分 公開
[純丘曜彰INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:純丘曜彰(すみおか・てるあき)

大阪芸術大学芸術学部芸術計画学科哲学教授。玉川大学文学部講師、東海大学総合経営学部准教授、ドイツ・グーテンベルク(マインツ)大学メディア学部客員教授を経て、現職に至る。専門は、芸術論、感性論、コンテンツビジネス論。自らも小説、作曲、デザインなどの創作を手掛ける。


 11月末、こんな事件があった。11月20日、幻冬舎の月刊誌『GOETHE』のWeb版に、その雑誌の常連の「美人秘書」とやら3人が鼎談するダイナースクラブの広告が掲載されたのだが、ここに、「通販サイトのカードでいばられてもね(笑)」「男性が交通系の機能がついたカメラ屋さんのカードで支払っていたときは、気まずく感じてしまって見ないふりをしました(笑)」「百貨店とかスーパーとかのカードしか持っていないと、「この人は何にもこだわらない人なんだろうな」と思っちゃう。」などと書かれており、会員から苦情が出て、26日に削除された。

 この広告は『GOETHE』側から持ち込まれた提案で、企画・制作は『GOETHE』に一任した、というが、事前チェックがあったにせよなかったにせよ、『GOETHE』なんかに広告を出そうとしたことからして、広告主のダイナースクラブ側の運営者(三井住友トラストクラブ)の責任は免れえない。そもそも、こんな広告を出してしまうくらい、自分たちの会社の事業定義を勘違いしているのではないか。

 そもそもダイナースは、クラブだ。バブル以前、親の代からの数十年来の会員としては、ダイナースの変貌と凋落には言葉も出ない。かつては教授・医師・弁護士、実績のある企業の経営者や管理職であることが入会条件で、それも、既存会員の紹介を必要とした。旅行でも、食事会でも、相応の教養と礼節のある人々の集まりで、楽しく歓談し、気持ちよく過ごすことができた。

 ところが、それが、いつの間にか、誰でも来々の成金カード屋に成り下がっていた。育ちの劣等感とカネの優越感のコンプレックスなのだろうが、わがままで横柄な人が増えた。会員雑誌『signature』も、最近は度派手な金満広告だらけで、もはやまったく趣味が合わない。昔からのまともな会員は、むだなぜいたくなどしないのが、分かっていない。

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