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» 2019年01月29日 06時00分 公開

池田直渡「週刊モータージャーナル」:マツダの新型アクセラ、失敗できない世界戦略 (3/5)

[池田直渡,ITmedia]

一般道で

 さて、まずはセダンに乗る。

 見たところなんの変哲もないシートに座ると「何だこれ?」と思う。直感的にこれは良いと感じる。実際、シートを調整してポジションを出してみるとなかなか素晴らしい。もちろんペダルやステアリングとの関係も良好だ。日本車にはかつてない出来だ。

 もう1点、書き添えておきたい。リヤシートの出来も良い。昨今のクルマはトルソアングル(背もたれ角度)が寝すぎているものが多い。クーペ的なスタイルのせいかもしれないが、Mazda3のリヤシートは久しぶりに納得の角度だった。今回は筆者一人で運転した都合でリヤシートでの走行は体験できていないが、トルソアングルひとつとっても人が座ることへの見識を感じた。

 オートマのセレクターをDに入れて走り出す。トルクがタイヤに伝わっていく感覚がしっかり分かる。何ならタイヤ半周で止めてみせろと言われたらできそうだ。もっともそのレベルのことができない心配は最近のマツダにはしていない。できて当然。しかし世の中にはいまだにダメなクルマもある。

正しい角度で座らせる昨今稀有なリヤシート 正しい角度で座らせる昨今稀有なリヤシート

 駐車場のスロープ段差を越える。足の動きはしなやか。そして思わず「硬いな」と言葉が出るほど高いボディ剛性。さらにステアリングコラムの支持剛性も高く、パワステの反力にも変な粘り感がない。非常に自然。むしろ自然過ぎて普通に乗ったら何が良いか分からないくらいだろう。マツダは「歩くように走るクルマ」を目指すと言う。そういうものになっている。これはダメなクルマと比較体感してもらわないと価値が伝わらないところだ。

 ホテルの前の通りに右折で出て、すぐに赤信号に捕まる。ブレーキを踏んで驚いた。「ブレーキが効かない」。思った減速が得られず、軽いパニックに陥りながらブレーキペダルを踏み足す。踏み足せばちゃんと減速Gが出て、危なげなく止まる。

 一瞬考えてから、マツダが何をやったのか分かった。これは踏力コントロール型のブレーキだ。ちょっと踏んだだけでサーボアシストが大幅介入する余計なお世話を排除したらこうなる。ブレーキはリニアであることが大事。何も最初からガツンと効く必要はない。要は筆者がダメなブレーキに慣らされていたということだ。

 渋滞のひどい市街地を走りながら、エンジンの低速トルクがしっかり出ていることを確認する。まあ重くても1.3トン程度のボディに2.5リッターが搭載されているのだから当然と言えば当然だが、下からしっかり粘り、電制スロットルも変な動きをしない。加えてブレーキが良いから、常に自然に停止発進ができる。

写真で見ても分かる通り、開口部は無理に広く取られていない。ボディ剛性の弱点となるテールゲート部で剛性を稼ぐために四隅を丸く残している 写真で見ても分かる通り、開口部は無理に広く取られていない。ボディ剛性の弱点となるテールゲート部で剛性を稼ぐために四隅を丸く残している

 ちなみに路面状況は劣悪で、気を付けていないと路面に大穴が開いている。日本ではほとんど出くわすことのないそんな路面なので、乗り心地が良いのか悪いのかは分からない。ただし路面の問題を別とすれば、クルマの動きそのものはいかなる方向への加速度変化に対しても滑らかだ。しかも嬉しいことに、常にちゃんと中立の位置へ戻ろうとする自然の感覚がある。

 その回帰特性は何となく地球ゴマを連想させる。ご存知の方も多いだろうが、地球ゴマとはジャイロ効果を生かした科学玩具で、外部から与えられた力に対してジャイロ効果で常に元の状態に戻ろうとする。ゴムで引っ張られるような感覚ではなく、自立感が伴うのだ。

 ステアリングの精度は高く、切ったら切った分だけ回頭が始まる。ロール感も適切でまさに意識することなく運転できる。

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