さて、目の前に並んだ新型Mazda3のセダンとハッチバック。一目見て感じるのはプレスラインに頼らない造形であり、三次元の曲面変化のみで表現する「ものの形」である。
マツダデザインのボスである前田育男常務は先に開催された東京オートサロンの会場でとても印象的なことを言った。
「デザイナーが線画でクルマを描けないんですよ。彩色しないと形にならない」
例えば、卵のようなものを思い浮かべていただきたい。あれは線画で描いたらただの楕円であって、立体がイメージできない。Mazda3は全てが曲面でデザインされており、見る角度によって形が変わる。本来ものの形とはそういうものであるべきだ。プレスラインとはそこに強制的に影をつけて、見える形を表現することなのだ。
Mazda3のデザインは4つのタイヤが地面に踏ん張り、側面を前後に走る凹面(インバース面)により、光の写り込みを連続変化させるものであり、本来のデザイン意図はクルマが動いている時にしか見られない。このクルマに関しては、写真で伝わるものは恐らく半分程度、街を走り始めてようやくその真価が伝わるだろう。
さらにセダンとハッチバックで、共通する外装部品は極めて少ない。それは表現するものが違うからだ。主査の説明によれば、セダンは「品格と個性を兼ね備えた紳士・淑女」をイメージし、ハッチバックは「感じるままに生きる自由人」を表現するのだそうだ。
マツダの例にもれずちょっと言葉選びは気恥ずかしいが、言いたいことは分かる。要するに「光のデザイン」という個性表現の中で、セダンはフォーマルさを、ハッチバックはアクティブさを表現するものと言うことだろう。
前述の前田常務に「かっこいいですね」と言うと、「その言葉が聞きたかったんです」と顔をほころばせた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング