おまめのフジッコ「カスピ海ヨーグルト」の成長が止まらない理由ねばり勝ち(1/4 ページ)

» 2019年02月04日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

 スーパーの商品棚に並ぶ、たくさんの種類のヨーグルト。普段から手に取る人は多いだろう。その中に、豆製品や昆布製品で知られる食品メーカー、フジッコの商品があることを知っているだろうか。

 それは、フジッコが2005年から販売する「カスピ海ヨーグルト」だ。発売から10年以上たつが、売り上げは落ちていくことなく伸長を続けている。伸び率はほぼ毎年2桁増で、右肩上がりに成長しているという。特に近年を見ると、5年前と比べて約2倍に増えた。

 大手乳業メーカーが競合となる中で、なぜフジッコのヨーグルトが売れ続けているのか。マーケティング推進室室長の紀井孝之さんに、“ねばり勝つ”戦略について聞いた。

photo フジッコが販売する「カスピ海ヨーグルト」

「粘りが足りない」危機を乗り越えたブランド力

photo 「粘り」が特長のカスピ海ヨーグルト

 15年、カスピ海ヨーグルトに“危機”が訪れた。同商品の特長である「粘り」の強さが品質基準に達していないことが判明したのだ。カスピ海ヨーグルトに含まれるクレモリス菌FC株は、糸状の粘り成分「EPS」を生み出していて、他のヨーグルトにはない独自の食感と、免疫細胞の活性化などの健康機能がある。

 その粘りが弱い状態では提供できない。15年11月、原因の特定と製造工程の見直しを行うため、販売休止を決断。設備や製造環境を改善して販売を再開するまでに、約3カ月を要した。

 このとき、紀井さんは「お客さんは戻ってくれるのか。売り上げは(休止前の)6〜7割になるのでは」と不安に思っていた。ところが実際には、すぐに休止前の8〜9割の売り上げになり、半年以内には前年並みに戻ったという。紀井さんのもとには、休止中も応援の声が届いていた。「品質にこだわるという即断即決を評価してくださる方が多かった。流通(小売店)からも『(商品棚の)場所を空けて待ってる』と言っていただきました」

 カスピ海ヨーグルトの希望小売価格は400グラム入りで258円(税別)と、量販店で販売されているヨーグルト商品の平均よりも100円ほど高い。それでも長らく支持を集めているのは、発売以来積み重ねてきた取り組みによって、リピーターを獲得してきたからだ。

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