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AIに職を奪われないための「メタ能力=能力をひらく能力」人間のAI化が問題(2/4 ページ)

» 2019年02月04日 07時46分 公開
[村山昇INSIGHT NOW!]
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ある能力には長けていても……

 組織の中には、特定分野の知識が豊富な人、ある処理技能に長けた人、修士号や博士号を修めた人、利発的でIQの高い人などがいます。しかし、そうした人たちが必ずしも仕事で高い成果をあげたり、独創的な提案をしたりするわけではないことを、私たちはいろいろと見聞きしています。

 「タコ壺(ツボ)的に深い知識があるがそれを他に展開できない」

 「言われた作業は器用に処理できるが、何か新しい仕事を創造することは苦手である」

 「才能に恵まれているのに、何かと組織への不満を言い、自分ごとで取り組まない」

 こうした人たちは、いわば「能力がありながら、能力がひらけない/ひらこうとしない」状態に陥っています。もっと厳しく言えば「ある次元の能力保持で満足していて、それより高い次元での能力発揮に怠けている」。なぜこういう停滞が起こるのか――それを考察するために、私が持ち出したいのが、「メタ能力」という概念です。

 メタ能力の「メタ(meta)」とは「高次の」という意味です。例えば心理学の世界では、「メタ認知」という概念があります。メタ認知とは、認知(知覚、記憶、学習、思考など)する自分を、より高い視点から認知するということです。それと同じように、本稿では「能力をひらく能力」として「メタ能力」というものを考えます。

【I次元能力】能力をもろもろ保持し、単体的に発揮する

 「〇〇語がしゃべれる」「数学ができる」「記憶力が強い」「幅広い知識がある」「文章力が優れている」「表計算ソフト『エクセル』の達人である」「〇〇の資格を持っている」「運動神経が鋭い」「論理的思考に長けている」――これらは単体的な能力・素養です。これらを発揮することがI次元ととらえます。

【II次元能力】能力を“場”にひらく能力

 私たちは仕事をするうえで、能力を発揮する「場」というものが必ずあります。例えば、家電メーカーの営業部で働いているとすれば、その営業チームという職場、営業という職種の世界、そして家電という市場環境。一般社員であるか管理職であるかという立場。これらが「場」です。そして場はそれぞれに目標や目的を持っています。

 私たちは、もろもろに習得した知識や技能(=I次元能力)を、「場」に応じてさまざまに編成し、成果を出そうと努めます。このI次元能力の一段上から諸能力を司る能力が、II次元能力です。俗に言う「仕事ができる人」というのは、単体の能力要素をただ持っている人ではありません。どんなプロジェクト、どんな職場、どんな立場を任せられても、I次元能力を自在に組み合わせて、着実に成果を出せるという人間です。

 単に「〜を知っている」「〜ができる」というレベルと、場の要請を感じ取り、それに応じた成果を出せるというレベルは明らかに違います。この違いこそ、I次元能力とII次元能力の違いです。

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