この方法論が通るならば、これまでは企業側が「我々の指導監督不足でした」と頭を下げてきた、横領、情報流出、パワハラ、SNSトラブルなどの「社員犯罪」も、入社する際の契約違反だなんだと言って、「個人犯罪」として「断罪」して、企業側の責任問題を矮小化することができるのだ。
謝罪会見を見れば分かるように、日本の企業危機管理は、有名企業の対応を踏襲する「前例主義」となっている。くら寿司、セブン-イレブンという有名チェーンが採用した以上、同様の問題を抱えた他社も次々と「問題バイトは訴えろ」と追随していく可能性があるのだ。
ただ、報道対策アドバイザーとして、この手の不祥事が発生した企業のサポートを行うこともある立場で言わせていただくと、損害賠償をちらつかせるなど「厳罰」は、今回のようなトラブルの抑止・再発防止にはあまり効果がない。というよりも、事態をさらに悪化させてしまう恐れもあるのだ。理由は以下の3つである。
(1)有能な人材から敬遠され、「問題バイト」がさらに増える
(2)「厳罰」への反発・反抗心
(3)元バイト・従業員からのリークが激化
(1)に関しては、アルバイト店員の立場になれば明白だ。不適切動画を投稿するつもりがなくとも、何か組織に迷惑をかけるようなことをしたら、企業からガッツリ損害賠償請求されるような職場で気軽に働けるだろうか。
それが働くということだ、とおじさんたちは言うだろうが、若者はそこまで重い理由でバイトはしない。当然、厳しくない職場の求人へと足が向く。そうなると結局、バイトに厳しい姿勢でのぞむ企業のもとには、若者が集まらなくなるのでぜいたくは言っていられなくなる。
ということは、勤務態度が悪くて、ルールを守らないような「問題バイト」でも採用をするしかない。また、とにかく辞められると困るという弱みもあるので、厳しく注意もできないで野放しになる。つまり、「バイトテロ」のリスクがグーンと上がってしまうのだ。
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