アマゾンのベゾスCEO、不倫脅迫騒動があぶり出す「デジタル時代の危うさ」世界を読み解くニュース・サロン(5/6 ページ)

» 2019年02月14日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

たくさんの“敵”をつくってきた報道

 ただ忘れてはいけないことは、ベゾスが不倫をしていた事実だ。ベゾスは写真やメッセージについてその真偽を争っていないし、不倫を否定していない(ベゾスがサンチェスと不倫関係になる前から夫婦は別居していたとの話もあるが)。ナショナル・エンクワイアラー紙が主張するように、日本でも、ベゾスほどの大物でなかったとしても、影響力のある要人なら週刊誌やワイドショーなどで間違いなく記事になっているだろう。

 同紙は過去にも、ニュース価値のある人々について次々とスクープを飛ばしている。これまでもゴルファーのタイガー・ウッズの不倫や、俳優のメル・ギブソンなど数多くのセレブの離婚をスクープしたり、歌手のホイットニー・ヒューストンやジョージ・マイケルなどの遺体写真を掲載したりしたこともある。歴代大統領をはじめ数々の政治家のスキャンダルも報じている。ニュース価値があれば徹底的にスキャンダラスな記事や写真を掲載する、歴史あるメディアだ。

 ちなみに同紙はトランプ支持であることを隠してはいない。というのも、同紙の主要購買層が「中年で中産階級、高卒の白人女性」と言われていることからも、きちんとターゲット層に向けた記事を作っているだけという言い方もできる。

photo 米国のタブロイド紙、ナショナル・エンクワイアラー紙には敵が少なくない(写真は記事と関係ありません。提供:ゲッティイメージズ)

 そのような過激なスタイルだけに、以前から敵も少なくなかった。セレブなどからは目の敵にされ、さらに01年の9.11同時多発テロの際には、炭疽(たんそ)菌入りの封筒が編集部に送り付けられて、編集者1人が死亡するという事件も起きている。

 筆者は、その頃に米フロリダ州にあった編集部に取材で訪れたことがある(現在はニューヨークに移動)。大手メディアのように大きな看板が上がっているわけでもなく、大きなビルに入って、セキュリティで守られているという感じもなかった。入り口が狭い真っ白な壁の地味な建物に編集部があったのを覚えている。誰も、まさかあんなところで超有名タブロイド紙が作られているとは思いもよらないだろう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.