戦略ミス?競合の躍進?景気のせい? どうして赤字になってしまったのか。どうして顧客は離れていってしまったのか。そして、どのようにして再び這い上がったのか。本特集では紆余曲折を経験した企業や自治体などの道のりを詳しく紹介する。
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連載第3回:本記事
英会話教室「NOVA」を展開していたノヴァは2007年10月、439億円という巨額の負債を抱え事実上の倒産に陥った。
全国に600校近くあった教室は全て一時閉鎖。受講料前払い制度の下、多くの生徒は決して安くはない金額を既に支払っていたにもかかわらず、レッスンを受けれないと不満を募らせNOVAの元を離れていった。
そんなNOVAの生徒数が、いま右肩上がりに伸びているという。破綻前は15万人近くいた生徒数はリーマンショックのあおりなども受け、一時5.4万人にまで減少していた。だが、17年11月期時点では8.1万人にまで持ち直している。さらに、英会話教室で得た売上高を見ると破綻した07年11月期は22億円だったのに対し、17年11月期には88億円とV字回復している。
なぜNOVAは破綻から再起することができたのか。隈井恭子社長にこれまでの道のりを聞いた。
前運営会社であるノヴァの経営悪化については、「受講料の前払い」というビジネスモデルが引き起こした過剰投資などが要因だったと指摘されることが多い。
当時は企業キャラクターの「NOVAうさぎ」を起用したテレビCMを頻繁に放映していたので、見た記憶があるという人も多いのではないだろうか。教室もアクセス良好な駅前の好立地を中心に開校し、校舎網を拡大していた。
はたから見れば、事業は順調だったように映っていたかもしれない。しかし、このような投資を続けていた結果、資金繰りは悪化し破綻に至った。
隈井社長は大学卒業後、ノヴァに入社。破綻当時は入社9年目の働き盛りで、関西のエリアマネージャーとして校舎の統括やスタッフ育成業務などを担っていた。業界最大手と言われていた企業の突然の破綻の知らせには、社員であった隈井社長自身も大きく動揺した。
このころは経営に携わる身ではなかったので、詳しいことは分からないと前置きしつつも「受講料を前払いでいただくと資産が一時的に潤沢になりますよね。その慢心が過剰投資につながってしまったのかもしれない」と語る。
ただ、経営悪化の原因はそれだけでない。営業の最前線にいた隈井社長は「(受講プランを)売ったら終わり」という考え方が営業現場にどことなくまん延していたのではないかと当時を振り返った。
「前払いで受講料を支払っていただくのが基本なので、ノルマを追う営業としては“プランを売る”ことが最終目的となってしまい、入会後の顧客フォローや継続して通っていただくための努力などが十分でなかったのかもしれません」
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