お店のミライ

都市部の無印を圧倒、ニトリはこのまま順風満帆か?小売・流通アナリストの視点(4/4 ページ)

» 2019年02月20日 06時30分 公開
[中井彰人ITmedia]
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都市部の雑貨マーケットは競合ひしめく

 ただ、都市部へ攻勢をかけるニトリの店は、今や売れ筋となったインテリア雑貨の廉価版販売店のようにも見える。雑貨中心で構成した都市型ニトリの競合は、これまでのような家具チェーンやホームセンターではない。今後もコストパフォーマンス一辺倒の状況が続くとともに、多種多様で奥深いとされる「雑貨」の世界である。しかしながら、この市場で勝ち抜くことは簡単ではないだろう。

 首都圏のあるショッピングセンターに行ってみると、ニトリデコホームの隣に、100円ショップの成長株、セリアの「Color The Day」があり、その下の階に無印良品、ロフトといったテナント構成となっていた。セリアは女子目線での品ぞろえに定評があり、最近では業界最大手ダイソーも一目置く存在となっている。ニトリの機能代替商品を、さらに廉価で品ぞろえしている面もあり、来店客は両者の商品を比較して買っているようだった。

 冒頭では、ニトリ都市部侵攻の影響はあると言っていた無印良品にしても、一部はニトリに流れているのは間違いなかろうが、客数、購買客数も多く、ニトリに完全に負けているという感じはない。都市部雑貨マーケットには強敵はまだまだ多そうだ。

ニトリの店内の様子 ニトリの店内の様子

 家具小売の世界で、コスパの高いインテリア雑貨という異業種商品で奇襲をかけたニトリは、業界内で圧勝する結果を出した。ただ、それは「雑貨の玄人」のいない地方での話である。雑貨を集客要因として来店頻度を上げることによって、家具業界内での競争に圧勝したということだ。雑貨関連企業のひしめく都市部において、雑貨小売業として競合比優位を確立するというのは、家具の王者ニトリといえども簡単なことではないだろう。

 無印商品にしても、雑貨製造小売業の代表格として、このまま本業の雑貨のジャンルで、押されっぱなしとは考えにくい。ただ、ニトリの本格的な挑戦が巻き起こす雑貨業界の競争激化は、きっと都会の雑貨のコストパフォーマンスをさらに上げてくれることになるだろう。

 便利で生活を楽しくしてくれる雑貨が、手ごろな値段で手に入るようになるなら、こうした競争は都会の消費者にも大歓迎されるはずだ。

著者プロフィール

中井彰人(なかい あきひと)

メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。


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