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都市部の無印を圧倒、ニトリはこのまま順風満帆か?小売・流通アナリストの視点(1/4 ページ)

» 2019年02月20日 06時30分 公開
[中井彰人ITmedia]

 「無印良品」を展開する良品計画は、2019年1月に今期業績予測を下方修正して、株価もさえないと報じられている。その背景を日本経済新聞では「良品計画の下方修正 国内苦戦 ニトリの影」として取り上げていた。

 下方修正の要因は、国内事業における家具やインテリア雑貨の売れ行きの思わしくないからだが、そこに都市部で攻勢をかけるニトリとの競合の影響だという分析で、良品計画の社長コメントも「ニトリと競合する部分があるのは事実」とのこと。

 そう言えば、首都圏郊外でもあの看板をよく見かけるようになったと思ってはいたが、最近では大都市圏にも、ニトリの「デコホーム」というインテリア雑貨中心の店が増えてきた。18年11月時点のIRデータを見ると、国内売上高の46%、国内店舗数の68%が関東、近畿という構成比になっていた。北海道発祥で、ロードサイド家具マーケットを制覇したニトリは、既に大都市の攻略を着々と進めているようだ。

大都市圏にも出店を加速するニトリ(同社サイト) 大都市圏にも出店を加速するニトリ(同社サイト)

売り上げの6割以上が雑貨

 最近では、大都市の方でもニトリの店舗をご存じだと思う。家具チェーン、ニトリの大型店舗は、1階はインテリア雑貨中心、2階が家具という構成になっていて、売り上げの構成比としては6割以上が雑貨類で、家具よりもずっと多いのだ。

 この雑貨類は無印良品と競合するジャンルが多いのだが、ニトリは無印良品を常にチェックしていて、その廉価版を提供しているとも言われ、無印としてはかなり鬱陶(うっとう)しい相手なのであろう。少し前なら、大都市中心に展開していた無印良品と、地方のロードサイド中心に展開していたニトリとは、直接対決することはそう多くなかった。しかし、無印良品も地方のショッピングモールへの展開が進んだほか、何よりもロードサイドの家具チェーンであったはずのニトリが都心部の中心までも進出したことで、こうした直接の競合関係が生まれた。

 ニトリの都市型店舗は、大型店舗の2階家具売り場を圧縮して、インテリア雑貨中心で構成した作りになっている。広い展示スペースを必要とする家具売場を極小化して、より商品が回転する雑貨類に絞っており、都心部に適した店にアレンジされている。こうした店舗を作れる家具チェーンはほとんどないため、ニトリは地方のロードサイドから出て、都会へも進出できた。

 一般的に、小売チェーンというものは、大都市型とロードサイド型ですみ分けている場合がほとんどであり、相互のエリアに進出しようとしてもなかなかうまくはいかない。例えば、家電量販店で言えば、都市型のヨドバシカメラ、ビックカメラ。ロードサイドはヤマダ電機、ケーズデンキ。食品スーパーでいえば、ライフ、サミットとヤオコー、ベルク。ドラッグストアでもマツモトキヨシとコスモス薬品のようにだいたい得意エリアは分かれているものだ。首都圏の駅前にあるイトーヨーカ堂と、地方に行けば必ず見かけるイオンも同様の得手不得手と言える。

 ニトリのように地方出身で、どこにでも進出可能な店舗アレンジができている企業は、この業界では珍しい(ユニクロや百円ショップもそうした数少ない存在)。ニトリが、こうした存在となり得たのは、インテリア雑貨があってこそ、である。そして、このインテリア雑貨こそが、ニトリという一地方の家具チェーンが、国内有数の小売業にまで成長できた原動力だったことは、あまり知られていないかもしれない。

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