日本車の未来を考える池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)

» 2019年03月18日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

多極化戦争

 そういうマーケットの中で日本メーカーには1つ異質な点がある。現在の日米欧中印の5極に対して、ほとんどのメーカーが複数のマーケットを押さえているのだ。個別に見ると多少例外はあるが、ざっくりと見ると日米の両マーケットを押さえており、加えて3極目として中国なりASEANなりを手札に加えようとしているのである。そしてだいたい欧州マーケットに弱い。

 日米タイプの代表はトヨタとホンダとスバルだ。ただしトヨタは中国攻略を始めつつあり、ホンダはそれに先んじて中国での拡大戦略を進行中だ。

 マツダは日本のメーカーとしては例外的に欧州で健闘しており、グローバルでのマーケットバランスが良い方だが、ここのところ米国への依存が強まりつつある。

 スズキは言うまでもなく日印が中心だが、実は欧州もそこそこ強い。

 日産は日本メーカーにしては珍しく、日本のマーケットを見切り始め、現在はインフィニティブランドでの米国と、日産ブランドでのASEAN、そして中国という具合で脱日本を目指しているかに見える。

 ダイハツは日本とASEANに根を張っている。

 こういう話を聞いて、どこの国のメーカーも同じではないかと思う人がいるだろうが、そうではない。

 米国のメーカーで国外で成功しているメーカーは皆無。欧州のメーカーも日米で成功しているメーカーはない。「ダイムラーやフォルクスワーゲンはどうなの?」と言う人もいるかもしれないが、日本のメーカーほど他国で売っているわけではない。ダイムラー(ベンツ)は少しビジネスのやり方が異質で、規模を見るとグローバルで200万台程度と台数で見る限り決して多くはないのだが、利益率が高いことでそれをカバーしている。平たく言えば高級車メーカーなのだ。

欧州メーカーは中国マーケットの攻略に全力を注いでいる 欧州メーカーは中国マーケットの攻略に全力を注いでいる

 という中で、欧州メーカーは初めて2極を取れる見込みがでてきた。それが中国マーケットである。欧州以外の大規模マーケットを取り込める見込みがあるから、今欧州メーカーは中国マーケット攻略に全力で取り組んでいるのだ。

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