なぜ「翔んで埼玉」はセーフで、「ちょうどいいブス」はアウトなのかスピン経済の歩き方(4/5 ページ)

» 2019年03月26日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

炎上してしまった「午後の紅茶」

 しかし、残念ながら炎上をしてしまったケースにはこのような視点がごそっと抜けている。分かりやすいのが、昨年のキリン「午後の紅茶」のケースだ。

 キリン公式Twitterで、「私の周りにいる……かも!?」ということで、「午後の紅茶」を飲んでいそうな女性として、「モデル気取り自尊心高め女子」「ロリもどき自己愛沼女子」「仕切りたがり空回り女子」「ともだち依存系女子」という4パターンの女性像をイラストにしてリツイートなどを呼びかけたところ、「顧客をバカにしている」などの批判が殺到して、投稿削除、謝罪へ追い込まれたのだ。

キリンビバレッジ公式Twitterで公開されたイラスト(削除済み)

 企業側からすれば、「自社製品を飲んでいる人」を自虐的にイジって、「あー、いるいる」「分かる、分かる」とクスリとしてもらいたかったのはよく分かる。事実、メディアの取材に対して、キリンは「午後の紅茶に親しみを感じていただくため」と回答している。

 ただ、残念ながらそこには、「自分自身をネタにする」というユーモアと、「とか言いながらも、結局は大好きなんですよ」という「愛」は感じられない。

 中でも致命的なミスは、自社製品である「午後の紅茶」をネタにしてないことだ。「午後の紅茶を飲んでそうな女性」という他者をイジってしまっていることで、「自虐」ではなく「他虐」になってしまっている。

 日清が過去にまったく売れなかった3種類の商品を再発売して、「今度こそ売れて欲しい 黒歴史トリオ」などと特設サイトをつくって話題になったが、「自分」はいくらでもネタにしていい。しかし、「客」は他人なので、それをイジるのは単なる「他虐」なのだ。

 そして、このような他虐のワナに最も陥りやすいテーマが「女性」なのだ。

 企業や自治体としては、あくまで「自分自身をネタにしている自虐ネタ」という意識があっても、そこに女性を絡ませてしまうと、受け取る側からすると、「女性をディスる他虐ネタ」と見えてしまうのだ。

 分かりやすい例が、「ちょうどいいブス」だ。

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