見えてきたホンダのMaaS戦略池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)

» 2019年04月01日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]
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ホンダの狙いは何か?

 ホンダは昨年10月に、米GMと無人ライドシェアサービス用車両の開発で協業を発表している。ややこしいことに実はこちらの枠組みにもソフトバンクの名前があるのだ。つまりホンダは枠組みを切り替えない限り、ライドシェアに関してはGMと、そしてもっと範囲の広いMaaSに関してはMONETと組んだということになる。

 これが戦力の分散配置になるのか、それとも資本の分散投資になるのかは今の所何とも言えない。私見を述べれば、自力による自動運転をGMと試しつつ、バックアップとしてトヨタのガーディアンシステムによる冗長化を狙っているのではないかと思う。

 トヨタは、さまざまなサービスプロバイダーによる自動運転に対するプラットフォーム側のバックアップとして、シークレットサービスのように「もしも」に備える二重システム化安全装置としての自動運転システム「ガーディアン」を開発している。

 例えば石焼き芋の移動販売のようなビジネスと、宅配便のビジネスでは、おそらくルートの取り方や移動速度など、運転そのものの考え方が違う。これを1つのシステムで片付けようとするのは無謀だ。だから自動運転システムは事業目的に応じてそれぞれ別のものになるはずだ。

 しかし一方で、歩行者を跳ねずに絶対に止まるとか、エネルギー残量と走行可能距離、あるいは充電拠点までのルート距離をコントロールするとか、基礎的に絶対に譲れないポイントはわざわざ個別に開発する必要はない。そういう部分をガーディアンが保証することで、自動運転システムのカスタマイズは楽になるはずだ。トヨタはそういうことを考えている。

 平たくいって、今回のホンダの決断は、独立独歩を貫こうとしてきたホンダの大きなスタンス変更に思える。ひとまずMONETを通じて、トヨタアライアンスとの距離は縮まることになる。後の選択肢として、アライアンスへの合流をカードに加えておくのは決して悪いことではないと筆者は思う。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。


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