年商54億円企業を「突然」継いだ兄弟 役員・社員が辞めていく中でも改革を続けたワケ(1/3 ページ)

» 2026年01月06日 07時30分 公開
[大久保崇ITmedia]

 2023年12月、老舗の不動産会社ハタス(愛知県刈谷市)で衝撃的な事業承継がなされた。会社の経営方針をめぐり、3代目社長である父親と息子たちが激しく議論。その結果、父親は退職を決意。年商54億円に上っていたハタスだが、経営の地ならしもないままに、当時23歳の塚本龍生氏と22歳の塚本宗万氏の兄弟へと引き継がれた。

ハタス代表取締役 塚本龍生氏(左)、取締役 塚本宗万氏(画像:ハタス提供)

 もっとも、2人が社会人経験の乏しい状態で、突然経営に放り込まれたわけではない。

 兄の龍生氏は大学卒業後、1年半にわたり2つの不動産会社で勤務。実務を通じて不動産業の基礎を学ぶとともに、コンプライアンス順守の重要性や、雇われる側として働く人の感覚を身をもって経験した。その後、2023年9月にハタスへ本格的に入社。代表就任前から社内に「改革室」を設け、社員へのヒアリングを重ねながら、業務や制度の課題を洗い出していった。

 一方、弟の宗万氏は2023年9月時点では大学生で、ハタスではアルバイトとして働いていた。将来的に自分で事業を起こしたいという思いを持っていたこともあり、兄が入社したタイミングで「大学に行っている暇はない」と判断。本格的に会社に身を置き、経営に関わり始めていた。

 冒頭の衝撃的な事業承継は、2人が入社した4カ月後に起こった。若き経営者は奮闘するも、引き継いだ半年後には2人の進め方に納得できず、役員5人中3人、社員の3分の1が会社を去るという事態に。こうした痛みを経験しながらも、2人は就任直後から手探りで改革を進め、およそ1年半で組織は大きく変わった。

 残業時間は半分以下に、離職率は一桁台に改善。AI活用で年間1350時間の業務削減も実現している。また、事業の収益性も向上しており、来期の売上高は130〜150%の成長を見込む。賃貸不動産の買取再販と売買仲介も新たに始めるなど精力的だ。

 嵐のような事業承継劇、その舞台で2人はどのようにして企業風土を変え、今後成長していく基盤を構築したのか。代表取締役の塚本龍生氏と、取締役の塚本宗万氏に話を聞いた。

「会社の課題を言ったもん負け」だった組織

 1930年創業のハタスは不動産業、建設業、LPガス事業を展開しており、塚本兄弟は4代目となる。「外から見ると複数の事業をやっているように見えますが、突き詰めると『賃貸経営を支える事業』をしています」と龍生氏は説明する。

 アパートの建築や売買、賃貸管理、賃貸仲介に加え、顧客である賃貸オーナーにLPガスを供給する。祖業のガス事業を起点に、オーナーのニーズに応える形で事業を広げてきた。

 龍生氏と宗万氏が継いだ当時のハタスには、改善提案が生まれにくい空気があった。「昔は『会社の課題を言ったもん負け』だったんです」と宗万氏は語る。課題を指摘すれば「じゃあお前がやれ」と言われる。しかし、やっても評価されない。そうした経験が積み重なり、社内には諦めムードが漂っていた。

 2人は代表就任前から社内の「改革室」で社員の声を拾い、課題をリスト化していた。年間休日の見直し、服装規定の見直し、行動指針の作成、採用面接の目的の明確化、事業責任者による月次決算報告――。「今見ると、書いてあることが当たり前のこと過ぎて」と龍生氏は当時を振り返る。だが、そうした基本を整えることこそ、当時のハタスに必要なことだった。

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