JR東日本では、19年3月15日以降、東北・秋田・北海道新幹線の一部区間や列車で、車内販売を取りやめた。また、他の新幹線路線や列車においても車内での弁当やサンドイッチの販売を中止するなど、取扱い品目を見直している。
他社でも、車内販売廃止の動きがあるのが現状だ。JR北海道が特急列車内での飲み物や弁当などの車内販売を2月末で終了したほか、JR九州も九州新幹線での車内販売を3月15日で終えた。またJR東海の東海道新幹線「こだま」全列車においても、「車内販売」は実施されていない。売り上げの低迷や人材確保の難しさから、もはや「絶滅危惧」の状況にあるのが車内販売の実態なのだ。そうした中、JR東日本の新幹線で車内サービスをリニューアルする試みは初めてとなる。
この理由についてJR東日本は、近年の駅ナカの商業施設や自動販売機の充実ぶりに伴い、乗車前に弁当や飲み物を購入する旅客が増えていることや、販売員の人手不足などを挙げている。今回のグランクラスにおける廃棄ロス削減の狙いも、こうした動きを受けたものとみられる。
だが一方で、前出の橋本氏はこう明かす。
「確かに近年では事前に弁当などを買われ、車内で召し上がる方が増えていると聞いております。だからこそ、車外では体験できないクオリティーのものを車内でお出ししたつもりです」
つまり、車内販売を打ち負かしたライバル、駅ナカ商業施設のクオリティーに勝てる料理を車内で出そうという狙いがある。そしてそれは「鉄道最上級」のグランクラスだからこそ実現できると言えそうだ。
さらに橋本氏はこう話す。
「日本料理は煮立ちを数秒長くしただけでも味が変わってしまうなど、とても繊細なものです。自分の考えたレシピをどう工場で再現するのか。いろいろ頭を悩ませましたが、こだわり抜いたものができあがったと思います」
前出の深見課長はこう語る。
「グランクラスは11年3月5日に満を持して登場したのですが、その一週間後に東日本大震災が起こり、大々的なPRができなかった歴史がありました。新しいグランクラスでは、幅広い方々に楽しんでもらいたいと考えております。これを機に改めてグランクラスを世の中にPRし、良さを知ってもらいたいですね」
高級化路線という点では、豪華寝台列車「四季島」の登場から1年経った18年においても8倍近い抽選倍率が続き、好調を維持している。果たしてJR東日本の戦略は今後いかなる結果をもたらすのか。グランクラスが“満席御礼”続きの様相となるのかどうかが勝負どころだ。
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